プーチンにしてやられた民主主義世界の危うさ


ウクライナ危機に関しては、ここまであらゆる人の勝手気ままな分析や意見や感想や予測などを尻目に、プーチンとバイデン両大統領、ゼレンスキー大統領、そして英独仏の首脳など、当事者たちの動きや発言を逐一追いかけてきました。

ロシアがウクライナに攻撃をしかけたところで思ったことがあります。

つまりバイデン大統領は、諜報とロシアのクリミア併合などの直近の史実から、ロシアの軍事侵攻をほぼ正確に予測していながら何もしなかった、あるいは何もできなかった、ということです。

同時にプーチン大統領は丸ごと悪であり、性善説に基づく慈悲や惻隠の情や人間味などを、決して彼に期待してはならないということも明らかになりました。

バイデン大統領は、ロシアが「ウクライナに軍事侵攻はしない」と言い続けていたころから、逆に「ロシアはまもなく侵攻を開始する」と繰り返し言明してきました。

ウクライナ東部の親ロシア勢力が政府軍に攻撃されたというフェイクニュースをロシアがでっちあげて、そこにいる自国民を救済するためとか、親ロシア派の人々をウクライナの虐殺から守る、などの理由をこじつけてウクライナを侵略する、と言い張ったのです。

それに対してプーチン大統領は、ウクライナには侵攻しないと宣言し、クレムリンを訪れた独仏などの首脳に対しても、「ウクライナに侵攻する気はない」と明確に告げました。

だがプーチン大統領は、その間もウクライナへの軍事作戦を周到に考え続けていたのです。狂言強盗も真っ青の役者ぶりでした。

さらにプーチン大統領は、冬季オリンピックにかこつけて中国の習近平国家主席と会談。

密約を交わしました。

つまり冬季オリンピックが終わるまではプーチン大統領はウクライナを攻撃しない。だが彼が攻撃を開始した暁には、中国はロシアへの支持を表明する、というもの。

そして中国は、プーチン大統領のウクライナ攻撃を積極的に支持する言葉こそ使わなかったものの、ロシア支持を鮮明に打ち出しました。

片やNATOリーダーのバイデン大統領は、ロシアが小規模の侵攻に留めるなら制裁しない、といつものボケ失言などもかまして顰蹙を買いました。

さらに「ウクライナにはアメリカ軍は介入しない」と、言わぬが花の真実を強調しまくるミスなども犯しました。

それはまるで、ロシアにどうぞ侵攻してください、とでも言わんばかりの稚拙な対応です。このあたりが失言王の老害大統領、と彼が陰口を叩かれるゆえんです。

そうではありますが、しかし、バイデン大統領の予言、つまり米諜報機関の情報はおどろくほど正確なものでした。

なにしろプーチン大統領は、バイデン大統領の予告をほぼ全面的になぞるような形でウクライナに侵攻したのですから。

プーチン大統領は、ロシアは最強の核兵器保有国のひとつ、とタブーのフレーズまで発して世界を恐喝しました。

だがそれでも、民主主義の良心とまともな思考力を持つNATO 諸国は、即座に反撃はできません。

たとえ言葉上とはいえ、NATO側も核を火遊びの対象にしてやり返せば、全面核戦争の悪夢が現実味を帯びかねないからです。

つまるところ自由主義陣営のNATOとバイデン大統領ができることは、やはりロシアへの経済制裁です。

だが経済制裁は、軍事介入に比べて効力が極めて小さい。それは歴史が繰り返し証明しています。

通りいっぺんの制裁ではダメなのです。

通り一遍の制裁とは、制裁相手のみが打撃を受ける制裁のことです。

そうではなく、制裁の効果が自国経済に跳ね返って、制裁をかける側も大きな打撃を受ける制裁こそが、真に強力な罰則です。

NATO側は、欧米全体と日本またそのほかの世界のすべての民主主義国家を巻き込んでの、そんな巨大な経済制裁をロシアに科すべきです。

ロシアは、中国を筆頭にする世界の独裁また強権主義陣営を相手に貿易を行うことで、民主主義陣営が科す経済制裁のダメージを最低限に抑えよう目論んでいます。

だが自由主義陣営が、真に自らの大きな損失と疲弊を覚悟でロシアを締め付ければ、戦争を仕掛けずにロシアを確実に損壊させることができるでしょう。

それは同時に、ウクライナ危機とロシアの行く末をじっくりと観察、分析している中国を叩くことでもあります。

ロシアがこのままウクライナの略奪に成功すれば、中国は足並みが乱れ勝ちな民主主義陣営が組しやすいと見て、たちまち台湾への侵攻を決意するかもしれません。

ロシアがウクライナ危機で全面勝利を収めれば、それはそっくりそのまま中国の勝利でもある可能性が高いのです。

その意味でも、中国の後ろ盾も得て猛り狂っているように見えるプーチン大統領の野望は、必ず粉砕されなければなりません。

だが悲しいことに、民主主義陣営の各国がそれぞれの大きな犠牲を受け入れて、そこまで深く結束することはあり得ないでしょう。

誰もが自国の利益に目が眩んでいます。

結局、アメリカが先導する民主主義陣営は、ウクライナがロシアに自在に蹂躙されるままに、哀れなウクライナを見捨てることでしょう。

ウクライナを見捨てることでNATO加盟国を守り、自由主義世界全体の経済権益も守るのです。

そうやって海千山千の逆賊プーチン大統領はますます強くなり、中国のラスボス習近平主席は、香港を破壊した勢いで台湾を踏みにじり、尖閣を掻っさらって沖縄を強奪し、さらに九州へと魔手を伸ばしていく可能性がないとは誰にも言えません。

NATO もその他の世界の自由主義勢力も、そして尖閣と沖縄と九州を含む日本国全体も、ロシアの蛮行を指をくわえて見過ごせば、取り返しのつかない事態が連鎖的に起きるかもしれないことを、明確に意識しつづけるべきです。

 

 

 

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