
目の中に脂肪の固まりが突出する「眼窩脂肪ヘルニア」の手術を受けてほぼ一週間が過ぎました。
手術日は2度に渡って変更され、最終的には当初の4月末から6月12日に変わりました。
初診は有能な眼科外科医として知られるアンドレアC教授に当たりました。筆者は彼のことを全く知りませんが、同伴した妻が医師の高い評判を聞き知っていました。
教授は揺るぎない自信と誠実さにあふれた言動で、目にメスを入れるというおぞましい光景を想像して震えている筆者の気持ちを動かし、納得させ、手術に踏み切らせました。
2回に渡った手術日変更の知らせは、最初がC教授の秘書、2度目は手術日の前日、教授自身が直接電話をしてきました。
直前の変更は不審でしたが、筆者の病気は深刻なものではないこと、執刀医の教授自身が連絡をくれた事実などで疑念はすぐに晴れました。
ところが手術直前になって執刀医は教授ではないこと、手術は局部麻酔ではなく全身麻酔を行うことが明らかになりました。
あまり愉快ではありませんが、筆者はそれらを問題にすることなく予定通り医療スタッフに身を任せました。
筆者は過去に受けたいくつかの手術とその他多くの受診経験を通して、イタリア北部の、特に筆者の住まう地域の医療体制に絶対の信頼を抱いています。
手術前の厳重なチェックと周到な準備作業等は今回も全く変わらず、何の不安もありませんでした。
できれば有能な外科医とされるC教授の執刀にあづかりたかった、とチラと思わないでもなかったのですが、彼が選んだのであろうやや若い執刀医も全面的に信用しました。
案の定オペは順調(恐らく)に進み、筆者は全身麻酔から目覚めました。ほとんど快適な気分でした。病室に移動し、起き上がれる状態になったとき手洗いで鏡を覗きました。左目は何事もなかったかのようにこちらを見返していました。
本当に眼中にメスが入ったのか?と疑いたくなるほど完璧でした。視力も視界も手術前と同じに感じました。充血も腫れもありませんでした。
腫れは術後しばらくして起きるものという認識があったので、そのことに関しては身構える気分はあったのですが、視力も視界も完璧で充血もない事実が筆者をすっかり安心させました。
ところが自宅療養が始まった翌日の夕方ごろから異変が始まりました。目が充血し腫れが始まったのです。
その症状は少しづつ悪化して、充血は深く黒ずみ鏡に映る目の全体が闇の中にある穴のように見えることさえありました。目蓋が開けずらい違和感も出ました。
目の全体がゆらぐようなかすかなめまいも感じるようになりました。だがそれは服用している抗生物質のせいではないか、と自分に言い聞かせました。
今、もっとも気がかりなのは視界がかすむことです。どす黒く見える眼中の深い充血とともにそれは少なからぬ不安を呼びます。
7月初めに予定されている術後の経過検査を前倒ししてくれるよう病院に掛け合いました。
それは受けいれられ、まもなく病院に向かいます。
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