地に落ちた勇者、マンチーニに地獄はない

 

 

イタリアサッカーの勝ち組、あるいは常勝監督とも形容できるロベルト・マンチーニ氏が、サウジアラビア代表監督を首になりました。

マンチーニ監督は2021年、欧州選手権で53年ぶりにイタリアを優勝に導いて大喝采を浴びました。

ところが2023年、サウジアラビアから同国の代表監督就任を要請され、提示された年棒2500万ユーロ、およそ41億円に釣られてイタリア代表監督の職を投げ出しました。

W杯にも匹敵する欧州選手権を勝ち抜いた、マンチーニ監督への賞賛に満ちていたイタリアの世論は、一夜にしてブーイングに変わりました。

莫大な金額が右から左に軽々と動くサッカー界のこと。彼が大金に釣られるのは仕方がない。だが、W杯予選の大事な試合が控えているまさにその時に、代表監督の座を去った無責任さが国民の怒りを買いました。

しかしそれも一瞬の出来事でした。サッカービジネス界の騙しあいと裏切りと金権体質に慣れきっている人々は、すぐに事態を忘れました。

それから1年半後、つまり2024年10月24日、成績不振を責められて、マンチーニ氏はサウジアラビア代表監督をお払い箱になりました。

イタリアの一般有力紙はこぞって「金に転んでサウジアラビアに走ったマンチーニが、馘首されてすごすごとイタリアに舞い戻った」と、皮肉と指弾と嘲笑を交えて記事を書きまくりました。

筆者もそれらの新聞と同じ気分ですが、同時にイタリアの、またヨーロッパのサッカー界は、明日にはもうマンチーニ氏の不徳のことなどケロリと忘れて、彼を雇うために臆面もなく奔走しまくるだろう、とも思っています。

 

 

 


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イタリア内の異国・アオスタを遊ぶ

ギリシャ・クレタ島からイタリアに帰った翌日、つまり10月12日にはフランスとの国境の街・アオスタを目指して車を走らせました。

仕事兼遊びの道行。遊びの要素がある分だけ、ギリシャで溜まった“休暇疲れ”はほとんど感じず、真夏のような気候のクレタ島からふいに寒いアルプスの街に入る感覚が・も新鮮でした・だった。

アオスタは、イタリアの5つの特別自治州のうちの一つ、ヴァッレ・ダオスタ州の首都です。

イタリアには20の州があり、そのうちの5つは特別自治州です。ヴァッレ・ダオスタ のほかにはシチリア島嶼、サルデーニャ島嶼、トレンティーノ=アルト・アディジェ、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州があります。

特別自治州は15の通常州よりも先に州として認定され、そのうえ通常州よりも強い自治権を付与されています。

イタリアの大部分を占める通常州に先んじて、特別自治州のほうが共和国の構成要素として制定されるところが面白い。多様性の花が咲き乱れるイタリアならではの歴史です。

イタリアは国の中に地方があるのではなく、各地方が蝟集して国家になったというほうが相応しい共和国です。そこでは多様性が非常に重んじられます。

特別自治州はいわば多様性尊重の象徴的存在。その名の通り特別に立法権が認められ、地域で徴税される国税を分配されるなどの強い自治権があります。

5つの特別自治州はイタリアの一部ながら独立志向が強い。特にシチリア州と トレンティーノ=アルト・アディジェ州がそうです。

そうはいうもののしかし、ドイツ語圏の トレンティーノ=アルト・アディジェ州とは違い、シチリア島嶼州はイタリア本土への敵愾心は強くないと言えます。

一方トレンティーノ=アルト・アディジェ州の、特にボルザノ県などでは、事あらばイタリアから独立しようとする勢力がいつもうごめいています。

同州のボルザノ県の大半を占めるいわゆるチロルの人々は、イタリア人というよりもオーストリア人でありドイツ人という印象が強い。 イタリア人とドイツ人では肌合いが大きく違います。

イタリア語とは全く違うドイツ語圏を含むトレンティーノ=アルト・アディジェ特別自治州は、イタリア中央政府と摩擦を起こすことも少なくありません。

ヴァッレ・ダオスタ州は外国語のフランス語圏に属します。その意味では ドイツ語圏にあるトレンティーノ=アルト・アディジェ州に似ています。

だがフランス語はイタリア語と同じラテン語であり、フランス人とイタリア人も同じラテン系民族。共通点が多いだけ、ヴァッレ・ダオスタ州はトレンティーノ=アルト・アディジェ州よりもイタリアの大部分と親和的です。

言葉を換えればトレンティーノ=アルト・アディジェ州は独立志向が強く、ヴァッレ・ダオスタ州はイタリアと一体化しています。

北方民族の規律や整頓や機能性や小奇麗さよりも、南方ラテン系の猥雑や闊達や不器用やカオスっぽさがどうしても好きな筆者は、両州のうちではヴァッレ・ダオスタ州により愛着を覚えます。

食べ物もオーストリア・ドイツ風が多い トレンティーノ=アルト・アディジェ州に対して、ヴァッレ・ダオス州の料理はフランス的な面もありますが、ソースなどはあっさりしたイタリア風味が主で筆者はとても好きです。

 

 

 

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なぜ村上春樹ではなく韓江なの?

韓江さん のノーベル文学賞受賞はすばらしい出来事です。筆者はノーベル賞をもらった作家の作品をあわてて読むことはほとんどありませんが、機会があれば手に取ってみようと思います。カズオ・イシグロのときのように。そして、カズオ・イシグロ受賞の際も言いましたが、なぜ村上春樹ではなく韓江 なのか、とノーベル財団に問いたい。あらゆる文学賞は主観的なものです。従ってノーベル財団の選考者が誰を選ぼうと構いません。筆者は自分の主観で選ぶ優れた作家の作品を優先して読むだけです。そのことについては既に書いたので、ぜひ貼付する記事に目を通していただきたい。

https://terebiyainmilano.livedoor.blog/archives/52255786.html

《前記事の追伸》

貼付した2017年の記事の頃は不確かでしたが、その後に多くを読んで、桐野夏生も村上春樹や宮本輝と並ぶーベル賞候補と考えます。また筆者は同時に吉本ばななも読み、なぜ彼女がノーベル賞候補に挙げられるかを理解しました。

参照:https://terebiyainmilano.livedoor.blog/archives/52255786.html

 

 

 

 

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安かろう悪かろうもLCCの宿命

イタリア・ベルガモ国際空港発のRyanair便で、ギリシャ・クレタ島への旅を計画しました。

ベルガモ空港はイタリア随一のLCC(格安航空)のハブ空港です。格安大手のRyanairが、彼らの専用空港かと見まがうほど多くの旅客機を飛ばしています。

出発の日、そのRyanairの到着便一機の車輪が破裂して滑走路が破損。空港が全面閉鎖になりました。朝早い時間の事故だったため大混乱。

129便がキャンセルされ、2万1千人が足止めを食うことになりました。

ブリュッセル経由でクレタ島ハニアに向かう予定だった筆者らのLCC便は、空港で10時間近く待たされた挙句にあえなくキャンセル。

事故は仕方ありませんが、欧州のいまいましいビジネス慣行で、客への真摯な説明はほとんど無いありさまでした。

特に格安航空便の場合は、機内食を無くしたり預け荷物を制限したりの合理化を徹底した上に、インターネット予約を活用して人件費を思い切り抑えているため、客対応がお粗末です。

筆者らは空港で早朝から夕方まで待たされた上に、ブリュッセル行きとクレタ島行きの2便が欠航になりましたが、そのことの説明はどこにもありませんでした。

たまたま飛車が、何度もカウンターを行き来しては案内に訊ね、事態を確認するうちに知った情報なのです。

筆者らは同じ日の旅は諦めました。しかし、クレタ島の宿やレンタカーは全て予約済みなので、妥協せずに旅行代理店に相談しました。

すると一気呵成に翌日の航空券を確保してくれました。改めてプロの仕事振りに感じ入りました。

最近はネット仕様で旅の計画を立てることも多くなりました。今回のクレタ旅もそうでした。だが問題が起こると立ち往生したり、解決のために右往左往することも少なくありません。

時間の浪費がいちばん腹立たしいことです。

4月のフランス旅行でも、往路の便が突然キャンセルになる「事件」がありました。

だがその旅では事前のホテル探しがうまく行かなかったため、航空券も含めて今回緊急にチケットの手配を頼んだ同じ業者の手にゆだねていました。

おかげでキャンセルにもすぐに対応して翌日の便を確保し、ホテルも一日分を先に延ばす対応をしてくれました。

インターネットは便利な一方で、七面倒くさい操作が多々あり、習熟していないと時間を潰されることもよくあります。

若者ははなからスマホやネットに慣れています。若いからではなく、それが時代の流れだからです。それに習熟しなければ彼らは生きていけないのです。

片や老人は、それが無くても生きていけますが、習熟しない場合は時代に取り残されるか否かの選択を迫られることになります。

人の歴史は、神代の昔から常に今を生きる若者と時代に取り残される老人の命題を背負って綴られてきました。目新しいことは何もありません。

もはや老人世代に突入しつつある筆者は、時代に取り残されるのは嫌ですが、時代に追いつくために残り少ない人生の時間をムダ使いするのも癪です。

時間の浪費また精神衛生上の悪影響という負の局面と、時代に取り残され嘲笑されることのデメリットを天秤にかけてみると、筆者の場合は前者のほうがはるかに大きい。

特に時間の浪費は避けたいと強く思います。

それなので、今後も多いはずの旅の準備対応は、多少の出費を覚悟の上で、以前のように旅行代理店の世話になろうかと考え出しています。

それはほぼ常に、格安航空ではなくFSC、つまり従来の航空会社の便に乗ることを意味します。

ネットで旅行計画を練ることが当たり前になった今この時になっても、旅行代理店はしっかりと存続しています。

そこには必ず理由があるのです。

 

 

 

 

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10月のギリシャの真夏の光

10月初め、予定より一日遅れてギリシャ、クレタ島に着きました。

イタリア、ベルガモ空港でRyanAir機の車輪が破裂。滑走路が破損して空港が全面閉鎖になりました。

129便がキャンセルされ、2万1千人が足どめを食う大事故に巻きこまれました。

ブリュッセル経由でクレタ島ハニアに向かう筆者らの格安航空便は、空港で10時間近く待たされたあげくにあえなくキャンセル。

翌日の直行便が取れたのはほとんど奇跡でした。

クレタ島は10月3日の今日も夏真っ盛りです。さすがに最高気温は27~8℃止まりですが、相変わらず空気が乾いていてしのぎやすい。

人混みが落ち着くこの時期をねらっての海を楽しむ旅です。

だが若い時とは違いビーチで日がな一日強烈な日差しを浴びつづけることはしません。

朝のうちに長い砂浜を散策し、パラソルの日陰で読書。昼はキッチンも付いているホテルの部屋でサラダなどを軽く食べるか、近場または車で遠出をして地元料理を探し求めます。

食事後は名所旧跡を巡り、気が向けば夕刻前に再びビーチに戻って朝と同じ動きでのんびり時間を過ごします。

そのあとの夕食はメインイベントです。

割ときっちりとレストランを選んで出かけ、料理とワインを時間をかけて楽しみます。

多くのギリシャの島々と同様に、クレタ島にも子羊また子ヤギ料理の美味い店が多い。筆者はひんぱんにそこを目指します。

地中海沿岸旅では、羊肉またヤギ肉の探求が最近の筆者の趣味になっています。

多くの日本人が眉をひそめそうな食材は、地中海域ではきわめてありふれたもの。

それだけにレシピも豊富で興味深いのです。

 

 

 

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プラハの秋

9月末、プラハを訪ねました。そこを訪ねたいと強く思いつつ、仕事でもプライベートでも何かと障りがあって機会があrませんでした。ようやく来たという気分でした。

予想をはるかに上回るフォトジェニックな街並みに三嘆しきり。

世界にはフォトジェニックな街や自然や史跡が多くあります。だがプラハほど写真に撮りたくなる風景が街全体に詰まっている場所はそうたくさんはありません。

ベニスとローマが辛うじて対抗できるかも、と考えてみましたが怪しいところです。

街全体が建築博物館と呼ばれているのもうなずけます。

しかし博物館は生活の場ではありません。プラハの中心部には地元民が住んでいない雰囲気があります。

それは街がソビエト共産党の支配下にあった歴史と関係がありそうです。

プラハでは旅の楽しみである料理はあまり期待しませんでした。その代わりに評判の高いビールを飲みまくる計画でした。

ところが、意外にも料理は悪くありませんでした。特に加工肉を含む豚肉料理が中々の味でした。

豚のすね肉の炙り焼きや煮込みがとりわけ秀逸でした。

ビールは評判に違わず味わい深いものでした。種類も味も豊富で感心しました。

 

 

 

 

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石破茂の誠実公正の限界

自民党総裁選は石破さんの勝利で終わった。順当無難な結果です。

筆者は9人の候補をドングリの背比べと見ました。いずれもドングリならファシズム気質の高市さんの目もあっていいとさえ思ったりしました。

高市さん選出なら、少なくとも日本の諸悪の根源「男尊女卑」精神に一撃が加えられるからです。それは、無いよりはあったほうが確実に日本のためになるイベントです。

筆者は石破さんには多くを期待しません。彼の口癖である公正、誠実、且つ謙虚で丁寧な政治なるものが、薄っぺらなキャッチコピーに過ぎないことを知っているからです。

石破さんは2018年、故安倍さんと戦った総裁選で、47都道府県に向けたビデオメッセージを作りました。その中で「沖縄に基地が集中している理由について:

反米基地運動の拡大を恐れた日米両政府が1950年代、当時日本から切り離されていた沖縄に、山梨や岐阜にあった海兵隊司令部を含む海兵隊部隊を押し付けたからだ」と真実を語りました。

国土の1%にも満たない小さな沖縄には、日本国全体の安全保障を担う米軍基地が全体のおよそ70%以上置かれ、地元は基地被害に苦しんでいます。

それは余りにも不公平だ。負担を減らして欲しいという沖縄のまっとうな訴えは、安全保障の意味も民主主義の精神もあずかり知らない国民の無関心によってひたすら否定されます。

それはまたネトウヨヘイト系差別主義者らの「沖縄は補償金欲しさに基地反対を叫んでいる」という偽りの誹謗中傷まで呼んで、沖縄はいよいよ貶められ侮辱され続けています。

国民の気分を熟知している政府はそれを巧みに利用して、口先だけの基地負担軽減を言いながら、イスラエルによるガザ弾圧よろしく辺野古を蹂躙しています。

いわゆる構造的沖縄差別です。

石破さんはかつて、政府の要人として初めて沖縄の米軍基地問題の核心を語り、総裁になった暁には是正に奔走すると示唆しました。

だが彼は、沖縄を植民地状態のまま利用しようと企む自民党内の反動的な力に負けて、卑怯「不誠実」にもそのビデオメッセージをあっさりと削除しほっかむりを決め込みました。

つまり彼の言う「公正 誠実、且つ謙虚で丁寧な政治」とは、飽くまでも多数派に向けてのスローガンであり、弱者は切り捨てても構わないという、強権指向に満ちた偽善に見えます。

一事が万事です。

今このときは、とてもそんな政治家に期待をする気にはなりません。

 

 

 

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高市早苗‘首相’の影と、影の中にあるかもしれない光

FB友のお1人から「高市早苗」候補には絶対に首相になってほしくない、という強い怒りのメッセージが届きました。似たような趣旨のコメントはほかにも多い。

高市早苗候補だけは決して日本のトップにしてはならない、とつい最近まで筆者も考えそこかしこに書いてもきました。

今もそうですが、それでも総裁候補の顔ぶれを見ているうちに、毒を持って毒を制す、のような気分になっています。高市という猛毒をもって日本の男社会という毒に楔を打ち込む、という印象です。

ちなみに筆者は上川さんに期待し、老害政界に風穴を穿て、と密かに進次郎候補を応援していました。

だが残念ながら上川さんの覇気のない常識路線と、進次郎候補の明るいウツケ振りに呆れて、それらは過去形になりました。

代わりに猛毒の高市候補が日本初の女性首相になる手もあると考え出しました。

❛高市首相❜もありかもと考える第1の、そして最大の理由は高市候補がオヤジよりもオヤジ的な政治家でありながら、それでも女性だという点です。

首相になれば日本の諸悪の根源である男尊女卑メンタリティーにとりあえず一撃を見舞うことになります。それは、無いよりはあったほうが確実に日本のためになるイベントです。

心優しい良い女性、すばらしい女性を待っていては日本には永久に女性首相は生まれません。女性首相の大きな条件の一つは「タフな女」であることです。

サッチャーもメルケルもここイタリアのメローニ首相も男などにビビらないタフさがあります。高市候補は権力者のオヤジらに媚びつつも、鉄面皮で傲岸なところがタフそのものに見えます。

2つ目は、アメリカでカマラ・ハリス大統領が誕生すると想定しての強い興味です。

トランプ氏再選なら、❛高市首相❜は彼女の神様である安倍元首相に倣って、ここイタリアで言うケツナメ(lecca culo)外交に徹するだけでしょうが、ハリス大統領になった場合は遠慮し諭される状況もあり得ます。

それは❛高市首相❜を変える可能性があります。むろん、それにはハリス大統領のリベラルとしての、有色人種としての、そして女性としての強さと見識と人間性の有無が重要になります。

今のところハリス候補にはその兆候はありません。だが、彼女も大統領になって品格を備えるようになる可能性が高い。

肩書きや地位はただでも人を創りやすい。ましてや世界最強の権力者である米国大統領という地位が、人格に影響を及ぼさないと考えるなら、むしろそちらのほうが不自然です。

3つ目は天皇との関係です。人格者の上皇、つまり平成の天皇は静かに、だが断固として安倍路線を否定しました。現天皇は今のところ海のものとも山のものともつきません。顔がまだ全く見えないのです。

❛高市首相❜が本性をあらわにファシスト街道を突っ走るとき、天皇がどう出るか、筆者はとても興味があります。

天皇は政治に口出しをしないなどと考えてはなりません。口は出さなくとも「天皇制」がある限り彼は大いなる政治的存在です。それを踏まえて天皇は「態度」で政治を行います。

彼に徳が備わっていれば、という条件付きではありますが。

日本の政治と社会と国民性は、先の大戦を徹底総括しなかった、或いはできなかったことでがんじがらめに規定されています。

右翼の街宣車が公道で蛮声を挙げまくっても罪にならず、過去を無かったことにしようとする歴史修正主義者が雲霞のように次々に湧き出てくるのも、原因は全てそこにあります。

ドイツが徹底しイタリアが明確に意識している過去の「罪人」を葬り去るには、再び戦争に負けるか、民衆による革命(支配層が主体だった明治維新ではなく)が起きなければなりません。

しかし、そういう悲惨は決して招いてはならない。

極右で狡猾で危険な高市候補が首相になっても、おそらく戦争だけはしないでしょう。だからチャンスがあれば、彼女にチャンスを与えても良いのではないか、とつらつら考えてみるのです。

ちなみに今このとき筆者が女性首相にしてみたいのは蓮舫氏。彼女が嫌いな日本人は、高市候補が嫌いな日本人とほぼ同数程度に存在していそうですが、筆者は蓮舫氏をリベラルと見做して推します。

男では山本太郎氏です。山本氏なら戦争総括に近いこともやりそうな雰囲気があります。自民党のオヤジ政治家群は、ほとんどが過去の総括の意味さえ知らないように見えます。

それは国際社会では、中露北朝鮮を筆頭とする専制主義勢力と同じフェイク、民主主義の向こう側でしか生きられないカスな存在、と見做されることを意味します。

 

 

 

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「情報はタダ 」意識の未開と革新 

インターネットの爆発的な普及以降、情報を巡る環境はある意味でインターネット以前の有様に戻るという皮肉が起きています。

オンラインで無償の情報がいくらでも入手できる今は、人々は有料の記事や文章には目もくれません。

日本人がソフトウエアの価値を知らなかった頃は、メディア人でさえ情報をタダだと無意識に思い込んでいました。情報で食べているNHKでさえそうでした。 他は推して知るべしです

例えばフリーランスのディレクターである筆者は、自らの意思とコストで情報を集め、勉強し、ロケハンをし、企画書に仕上げてテレビ局や制作プロダクションまたスポンサーなどに持ち込みます。

企画が採用されれば制作費が出て初めて収入になります。採用されなければ全ての出費はパーです。それが番組作りのルールです。自分のリスクで金と時間と労力をつぎ込むのです。

ところが情報はタダだと考えられた時代の亡霊に取り憑かれていた日本のメディアはかつて、フリーランスの筆者の事務所に、報酬を度外視して「誼み」であれこれを調べてくれと涼しい顔で言ってきたものです。

その上で番組が作れるなら金を払いましょう、という態度でした。情報そのもが既にコストだという意識が薄かったのです。

日本のあらゆる産業分野はつい最近まで、今の中国のように平気で他国の製品をコピーし、パクリまくり、サル真似をして平然としていました。

形あるもの或いはハードウエアには金を払うが、ソフトウエアには支払いませんでした。今から考えると信じがたいことですが、知的財産の意味も価値もあまり分かっていない者が多かったのです。

筆者はアメリカで仕事をしたおかげで「情報は金と時間を費やして得る商品」と早くに徹底して思い知らされていました。そこで情報には金を払ってください、とあの手この手で主張しました。

少しは日本のメディア人の意識改革に貢献したのでないかと自負しています。

その後、日本も欧米の後を追いかけてソフトウエアの価値を知り、知的財産権の重大を学び、ハードウエアはソフトウエアがあって初めて製品化され、ソフトウエアによって機能化することを了得しました。

だが、やがてインターネットの時代がやって来て、WEB上には持ち帰り自由の情報が溢れ返るようになりました。すると人々は、まるで先祖返りをしたかのように情報はタダと思い込むようになりました。

情報が万人に無料で行き渡る状況は、誰もが無償で教育を受けることができる社会と同じように大切なことです。しかし、情報収集には莫大な費用が掛かっています。

その費用が公費でまかなわれない以上、誰かが支払わなければなりません。その誰かとは明らかに情報の消費者であるネット住民です。

歪な状況は将来必ず是正されるでしょうが、いずれにしても紙媒体がネットに置き換えられるのは、避けようがない未来に見えます。

 

 

 

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牙を剥かないトランプさんもやっぱり消えてほしい役者に見える

先日、イタリア時間の午前3時に始まったトランプvsハリスの討論会を生中継で観ました。

トランプ候補は、相手や司会者の質問をはぐらかしながら自らの岩盤支持者が聴きたいことだけを集中してわめく、という自身が2016年の大統領選挙で発明した手法にこだわっていました。

だが、ハリス候補がそこに小さな風穴を開けて、トランプ候補を討論の本筋に引っ張りこむ場面があった分だけ、討論はハリス候補の勝ち、というふうに筆者の目には映りました。

トランプ候補は司会者が提示するほぼ全てのテーマで、当初はテーマに沿って話し出すものの、途中で脱線して移民問題を声高に論じることを繰り返しました。

バイデン政権がメキシコ国境から入る多数の移民を受け入れ、それがアメリカを危険に陥れているという、 一貫した主張です。

トランプ候補は排外差別主義者も多い彼の岩盤支持者層が、移民問題をもっとも重要なイシューと捉えることから、話をしつこくそこに持っていこうとするのでした。

彼は反移民感情に支配されるあまり、移民はペットの犬や猫を食べているとさえ発言し、司会者がそれは真実ではないとたしなめる場面もありました。

トランプ候補は移民を憎む彼の支持者の受けを狙って、平気でそうした下劣な発言をすることがしばしばです。

2016年の選挙戦以来続く憎しみを煽る彼のレトリックは、アメリカ国民の半数にとってはもはや恥ずべきことなどではなく、ごく当たり前の手法になってしまいました。

程度が低いと形容することさえはばかられるような、醜い主張を平然と口にできる男が、かつてアメリカ大統領であり、かつ再び大統領になろうとやっきになっている現実は見苦しい。

筆者は、日本で同時進行している自民党の総裁選挙において、高市早苗氏だけは断じて総裁に選ばれてはならないと考える者です。それと同様にトランプ候補もけっして再び大統領にしてはならない、と腹から思います。

しかしアメリカ国民の少なくとも3割強は、トランプ候補と同じことを信じ込み、選挙になると彼らに同調する者が増えて、結果投票者のおよそ半分がトランプ主義者へと変貌することが明らかになっています。

そういう状況を踏まえれば、討論会でやや優勢だったハリス候補が最終的に勝利を収めるがどうかは、全く予断を許しません。

その根拠となるもう一つの要素を指摘しておきます。

トランプ候補は過去の討論会では、相手への憎悪や怒りや悪口を狂犬のように吼えたてることも辞さなかった。

むしろその方法で隠れトランプ支持者とも呼ばれたネトウヨヘイト系差別排外主義者に近い人々を鼓舞して、彼らが闇から出て名乗りを上げるように仕向けました。

それは社会現象となり、彼らが団結してトランプ候補を第45代アメリカ合衆国大統領に押し上げた、と表現しても過言ではない状況になりました。

それらのいわゆる岩盤支持者は今も変わらずにそこにいます。だが一方で、差別や憎しみや怒りを露わに他者を攻撃しても構わないという彼の行動規範は、多くの人々の反感も買っています。

トランプ候補は無党派層を始めとするそれらの反トランプ派の票を意識して、今回の討論会では汚い言葉や激しい表現で相手を罵倒するのを控えて「紳士」を装ったふしもあります。

そして反トランプとまではいかなくとも、トランプ候補を支持するかどうか迷っている人々が、彼の「少しまともな」言動に好感を抱いて支持に回ることも十分にあり得ます。

それは少数の有権者かもしれませんが、あらゆる統計で僅差のレースが確実視されている厳しい戦いでは、そのわずかな数の票が決定的な影響を持つこともまた十分に考えられます。

結果11月の選挙の行方は、やはり五里霧中の探し物、と言うにもふさわしい極めて微妙なものになると思います。

 

 

 

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