アッパレ自民党

中国が「香港国家安全維持法」を施行させたことに抗議して、自民党は延期されている習近平国家主席の国賓としての日本訪問を中止しろ、と政府に求めるといいます。

政府は安倍首相が代表ですが、自民党総裁もまた安倍首相なのですから、結局その方針は安倍首相主導のものなのでしょう。筆者は政治的に安倍首相を支持しないが、この決定は大いに支持します。

米トランプ大統領は、「香港国家安全維持法」に対する中国への抗議を口先だけで吼えて何もしません。いや、香港に認めている経済優遇措置を破棄して一応の制裁は科しました。だが中国はそんな制裁など屁とも思っていないでしょう。

習近平主席が率いる一党独裁機構内では、彼の一存で14億余の民衆の生き死にさえ縦横に裁断できます。香港が経済的に行き詰まるなら、そこが完全に破綻し人々が死に絶えるまで制裁されたままにしておけばよい、とさえ彼らは考えます。

考えるばかりではなく、彼らは計略を実行することができます。それは単なる経済よりもはるかに大きな、抑圧、隠蔽、また暴力御免の、デスポティズムという名の万能カードです。ここ最近の米中経済戦争において、中国がアメリカが打ち出す政策に一向にひるまないのも同じ背景があるからです。

米国が香港、つまり中国に科した経済制裁は、自由市場経済では重要な意味を持ちますが、一党独裁国家に対してはそれほどの効果はないでしょう。自由主義陣営はそろそろそこに気づくべきです。そして経済制裁や規制とは違う何かを編み出すほうがいい。

それは米国一国だけではなく、あるいは欧州やEU単独でもなく、むろん日本やインドやカナダやオーストラリアなどの独自策では毛頭なく、自由主義陣営が一丸となって考え実行しなければ決して成功しません。米中経済摩擦でアメリカが単独で中国に対峙して、少しも埒が明かないのが何よりの証拠です。

だがトランプ大統領は、日本を除くほとんどの先進国と自由主義陣営の国々と対立しています。少なくとも蜜月関係にはない。アメリカファーストの利己主義と品格のかけらもない言動が各国の反感を買っているのです。何でもかんでも彼に従うのは、アメリカの従僕に徹して恥じない安倍政権のみです。

香港国家安全維持法への一応の反撃も米国は一国のみで行いました。他の国々を先導して強力な態勢で中国に物申そうという意識がまるでありません。当たり前です。その少し前にはG7をアメリカで開催しようとして、コロナ禍を言い訳にする独メルケル首相やカナダのトルド-首相らにそっぽを向かれています。全く信用がないのです。

結局トランプ大統領にとっては自身の選挙だけが重要で、世界の自由と民主主義と人権などという高尚なコンセプトには興味がないのでしょう。それどころがコンセプトの意義さえ理解していない可能性がある。だから香港の国安法への対応も一国主義のおざなりなものになってしまっています。

トランプ大統領の変わり映えのしない動きとは裏腹に、日本は自民党が習近平国家主席の国賓としての日本訪問を中止するべき、と主張しはじめました。本気ならアッパレな動きです。ぜひその方針を維持してほしいと思います。

だが何事につけトランプ大統領の政策にケツナメ追従する安倍政権です。今回も中国に制裁を科したトランプ大統領に盲目的に従っただけ、という見方もあるでしょう。だが、それは違うように見えます。

なぜなら曲がりなりにも自民党(つまり安倍政権)独自の考えで明確に習近平訪日を拒否する、と言ったのですから評価されてしかるべきです。トランプ大統領に追従するだけの外交を展開していた政府、および政権党の自民党にしては、上出来の内容です。

おそれることなくその線でまい進してほしい。アッパレなものはアッパレです。従来なら安倍政権つまり自民党は、トランプ大統領のケツをなめる一方で、中国に対してもいい顔をして「習近平主席の訪日を待ち続ける」などと言い張るあたりがオチだったのですから。。

 

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