エーゲ海の光と風~渋谷君への手紙~

〖 渋谷君

エーゲ海でまた10日間遊んできました。

いつものように仕事と遊びを兼ねた旅ですが、遊びを含む仕事なんて結局遊びに過ぎない、と僕は喜びとともに思い、そう言いふらしています。

訪ねたのはロードス島とヒポクラテスのコス島。

連日飽食しました。食事が美味いんだ。特にナス料理。また子羊とヤギ料理も良かった。

コス島からトルコのボドルムにも渡ったよ。

トルコでは成獣とおぼしき羊の肉の料理を食べました。羊肉の臭みが見事に消されて、ほのかな「風味」にまで昇華していました。

羊もヤギも料理法によってはホントにおいしい、ということの見本のようでした。

エーゲ海は想像したよりも光が白くて、まぶしくて、魂を揺さぶられました。

日本の最南端あたりの島の、強烈な日差しにまみれて育った僕が、あ然とするほどの輝かしい陽光とはどんなものか君に想像できるかい?

砂浜に横たわって真っ青な空を見上げていると白い線が一閃して、良く見るとそれが強い風に乗って遊ぶカモメ、というような美しい体験を次々にしたよ。

エーゲ海を吹き渡る風は豆台風並みに強いから、カモメの飛翔速度が電光石火、一閃する矢のごとし、というふうになるんだ。

また空気が乾いて透明だから、高速滑翔するカモメの白が単なる白じゃなく、鮮烈に輝く白光というふうに見えるんだね。

コス島では面白い場所を発見。

なんと断崖絶壁が海に落ち込むちょうど真下に温泉が湧いているんだ。

熱い湯に浸かっては、冷水代わりに澄んだ青い海に飛び込む、ということをくり返して遊びました。

僕はこの間、温泉にはあまり興味がないと君に言ったが、それは温泉に入ることに興味がないという意味ではないんだ。

温泉旅館とか、ホテルとか、温泉に付随する日本の施設があまり好きではないということなんです。

サービスがどうも押し付けがましいし、客のことを考えている振りをして自分達の都合ばかり考えているように感じる。

例えば食事時間の融通がきかないとか、食事をしているそばからすぐに布団を敷いていってさっさと仕事を終わりたがるとか・・なんだかしっくりこない。

しっくりこないと言えば、食事もやたらと量が多過ぎて、せっかくのおいしい料理もうまさが半減してしまうように感じたりもするんだ。

でも僕も日本人だから温泉に浸かることそのものは大好きだよ。この辺がイタリア人の僕の妻とは違う。

妻は西洋人の常で、「湯に浸かって体を温める」ことの良さや幸福を子供の頃から教えられているわけじゃない。だから、温泉には執着しない。熱い湯も好きじゃない。

温泉は飽くまでも医療セラピーとして入るんだ。

またキリスト教徒の本性で、素っ裸で他人とともに湯に浸かることにも明らかに抵抗感があるようです。

この間NHKが、外国の温泉に浸かる外国人の男を、日本風に素っ裸にして撮影していて、実に見苦しかった。

外国人が全裸で温泉に浸かることはありえない。プールの感覚だから、屋内外を問わずに男も女も必ず水着を着るのが常識です。

ディレクターが、あるいはそういう西洋社会の習慣やメンタリティーにうとかったのでしょう。

日本風を押し通して湯船の縁に裸の男を座らせて撮影してしまい、不自然さが全面に出て実に居心地の悪いえげつない絵になっていました。

でも恐らく、番組を作っているスタッフ同様に視聴者もそのことには気づいていない。怖い話だと僕は思ってしまうんだ。

なぜって、国際的な誤解というのはそういうささいなところから始まって、大きく深くなって行ったりする。

誤解をなくすつもりで制作した番組が、逆効果になってしまうことも多々あります。

だから社会的に強烈な影響力を持つテレビに関わっている僕のようなテレビ屋は、日々もっともっと勉強を続けていかなければならない。。

お、おふざけが好きな僕にしては、ちょっとマジ過ぎるメールになってしまいました。

ギリシャにいても、結局どこかで日本を考えていたりするのが僕の癖です。

今回もギリシャではいろいろなことを見て、いろいろなことを考えさせられました。

地中海巡りは仕事半分、休暇半分のつもりの旅行ですが、これまでのところは8~9割が仕事になってしまっています。

もう少し自由な時間を広げて、最終的には「リサーチ休暇」のようにするのが夢です。

何はともあれ、地中海世界は面白い。今後は何年もかけてどんどん地中海を見て回るつもりでいます。

                            それでは 〗

 

 

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