AfDの恐怖はありきたりになって、故にさらに危険が増した

ドイツ総選挙の結果は驚きのないものでした。極右のAfDが躍進して、第1党の「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」に次ぐ2位につけました

だがそれは早くから予想されていた展開で、目新いものではありません。

ならばAfDの危険はなくなったかと言えば、もとより全く逆で、2021年の前回選挙に比べて支持を倍増させた極右党の勢力が今後も続伸すれば、やがて世界をも激変させかねない事態です。

だが第1党になったキリスト教民主・社会同盟は、「ファイアウォール(防火壁)」を盾にAfDとの連携を拒否しています。従ってAfDが近い将来に政権入りする可能性は低い。

ドイツの「ファイアウォール(防火壁)」はナチスへの嫌悪と反省から生まれました。極右政治がタブー視され、政党間でAfDを政権から排除する合意が形成されたものです。

だが仮にAfDが政権の一角を担うことになっても、彼らは生の主張をそのまま前面に押し出すことはないと筆者は考えます。

それはここイタリアの極右「イタリアの同胞」とそれを率いるメローニ首相が、極右からより穏健な急進的右派へと舵を切って進んだ例を見れば分かります。

ここイタリアでは政治土壌の主要因子である多様性がそれを成し遂げますが、ドイツにおいては国内のリベラル勢力とEUの中心勢力が、極右モメンタムを厳しく抑制すると思います。

また客観的に見て、AfD自体も過去のナチ党 (国民社会主義ドイツ労働者党)とヒトラーの轍を踏むとは考えにくい。

ヒトラーはヒトラーを知らなかったが、AfDとその支持者たちは巨大な負の遺産であるヒトラーを知悉しています。その現実が彼らのナチス化を厳しく制すると思うのです。

そうではありますが、しかし、トランプ主義がトランプ氏以後、ヴァンス副大統領を始めとする“トランプの金魚の糞”勢力によって席巻され続ける場合は、状況が全く違うことになるdしょう。

欧州ではAfDとそれに付き従うと見られる極右政党がさらに力を付けて、社会情勢がかつての日独伊三国同盟時代のような暗黒に向かいかねません。

人々の怒りをあおり、憎しみの火に油を注ぎ、不寛容の熾き火を焚きつけるのが得意な彼ら極右過激派の悪意は、易々と世の中を席巻します。歴史がそれを証明しています。

従って彼らは拡大する前に抑え込まれたほうがいい。放っておくとかつてのナチスのごとく一気に肥大して、制御不能な暴力に発展しかねません。

とはいうものの、繰り返し強調しておきたい。欧州の今この時の極右勢力はヒトラーのナチズムやムッソリーニのファシズムと同じではありません。

悪魔の危険を知り、悪魔ではないように慎重に行動しようとする悪魔が、現今の欧州の極右なのです。

しかしそれでも、いやそうだからこそ、極右モメンタムは抑さえ込まれたほうがいい。激流となって制御不能になる前に、その芽が摘み取られるべきです。

なぜなら狡猾な悪魔も、悪魔には違いないからです。

 

 

 

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トランプのマブダチAfDの恐怖

2月23日に行われるドイツ総選挙を、極右政権下にあるイタリアからじっと見ています。ドイツの極右AfDがどこまで勢力を伸ばすかが最も気になるところです。

AfDは各種世論調査で、キリスト教民主・社会同盟の30%に次ぐ20%の支持率を維持しているとされます。

ドイツの支持率統計は正確だと証明されていますが、アメリカの隠れトランプ支持者と同じように、隠れ極右支持者がいる可能性もあります。驚きの結果が出ないとも限りません。

AfDはトランプ政権、またプーチン大統領らと同じ穴のムジナです。その周りにはトランプの吼えるポチ、マスク氏がいて、彼はAfDはドイツの救世主だと叫んでいます。

彼らに親近感を抱きつつ遠くない場所から眺めているのが、ここイタリアのメローニ首相です。彼女はトランプ大統領とマスク氏の友人です。友情の大本にはむろん政治イデオロギーがあります。

メローニ首相は極右と呼ばれ、極端なケースではネオファシストと規定されることさえあります。

だが彼女は政権樹立後は中道寄りにシフトし、穏健な極右あるいは急進的右派とでも形容できる政治姿勢を保っています。

EU(欧州連合)とも良好な関係を築き、それどころか時にはEUの中心的な役割さえ演じて、筆者が規定する「欧州の良心」を体現する姿態さえ見せます。

彼女がそうなったのは、イタリア共和国の真髄にある多様性がもたらす必然です。

イタリアの政治風土には、多様性が乱舞する故の極論や過激思想が生まれやすい。が、それらの極論や過激思想は、同じく多様性故により穏健へと向かうことを余儀なくされます。

メローニ首相と彼女が率いる極右政党「イタリアの同胞」は、トランプ主義と親和的ですが、同時にそれと対立しがちな欧州の良心と民主主義を守ろうとする力でもあります。

ドイツのAfDも、政権の一角を担うことがあれば、イタリアの同胞と同じ道を辿る、と筆者は考えてきました。

もっともそれは、イタリアの国民性とは違い、キレると歯止めが効かなくなるドイツの民意の存在の可能性、という不安を脇に置いての話ですが。

世界政治の舞台では、イタリアは日本と同じく取るに足らない存在です。一方ドイツは大きな影響力を持ちます。従ってAfDの躍進は大きな脅威です。

それでも同政党が単独で政権を握らない限り、ドイツのリベラル勢力と欧州全体のそれが抑止力となって、AfDの暴走はきっちりと止められると筆者は考えてきました。

しかし、第2次トランプ政権の誕生でその見通しには霞がかかり始めました。

ロシアとさえ手を結ぶトランプ主義が、今後も勢いを増して世界を席巻すれば、それに引きずられて欧州の極右も本性を露わにする可能性が高まります。

その際に、イタリアのメローニ首相がトランプ主義に引きずられるか、あるいは欧州の良心を守る砦の一角に留まり続けるかは、世界が真にどこに向かうかを占う手がかりになるかもしれません。

言うまでもなくなく将来、AfDが単独で政権を握るような事態になれば、そしてトランプ主義が今と同じく猛威を振るっていれば、イタリアの政治状況などほとんど何の意味を持たなくなるでしょうが。。

 

 

 

 

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見えてきたトランプの野望らしきもの

関税に固執するトランプ大統領の頭の中にあるのは経済のことであり、経済を強くすることで彼の支持者を満足させ、アメリカを偉大に、つまりMAGAを達成することである。

それがトランプ政権の使命であり彼の支持者が熱望することだ、というのは一面の真実に過ぎません。

経済力が強くなるとは、要するに軍事力が拡大することでもあります。トランプ大統領のひそかな野望は、経済を強くし軍事力を高めて世界を支配することかもしれません。

それというのも彼は、政権発足と同時にかねてからの主張だったグリーンランドを占領し、パナマ運河を収奪し、カナダをアメリカに併合すると平然と述べ、そこに向けて動いています。

そればかりではない。アメリカファースト、つまりアメリカの孤立主義を捨ててガザを軍事支配し、住民を排除してリゾート地に作り変えるとまでうそぶいています。

それらの主張は帝国主義への先祖がえり以外の何ものでもありません。どうやら彼は専制政治を導入して世界を支配したいようです。

もしそうならば、一党支配の元で覇権主義に走っている中国の習近平主席や、ソビエト再興の野望を抱いてウクライナを席巻し、さらに支配域を広げることを夢見るロシアのプーチン大統領と何も変わりません。

それどころかトランプ主義の専横は、民主主義を騙(かた)る分だけ質(たち)が悪いとさえ言えます。

トランプ主義の岩盤支持者らは、トランプ氏が選挙キャンペーン中に強調した「戦争をしない」、「ウクライナとガザの戦争を止める」、「誰も死なせない」などのキャンペーンにも熱狂しました。

アメリカはかつて世界の警察と呼ばれ、民主主義を守るという大義名分を掲げて多くの国に介入しひんぱんに戦争を仕掛けてきました。

トランプ支持者の国民はそのことにウンザリしている。だから彼らは戦争をしないと明言したトランプ氏を支持しました。彼らはトランプ氏を平和主義者とさえ見なしました。

だが果たしてそうでしょうか?トランプ大統領は、先に触れたように、グリーンランド獲得とパナマ運河収奪に軍事力を使うことも辞さないとほのめかしています。

ガザの場合には米軍を投入しそこを占領して、瓦礫を片付けリゾート地を造るとさえ明確に述べました。それらは容易に戦争を呼び込む施策です。

トランプ大統領は民主主義を守る戦争はしないが、侵略し、収奪し、支配する戦争は辞さない、と公言しているようなものです。

仕上げには彼は、ロシアに蹂躙されるウクライナを「加害者」と断じました。向かうところ敵なしの狂気であり凶器です。

トランプ大統領の本性は僭王であり侵略者のようです。危険極まりないと思います。

 

 

 

 




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トランプ主義の怖さの真髄

トランプ大統領は関税を武器にカナダとメキシコを平伏させ、 返す刀でガザの住民を追い出してリゾートに造り返る、というぶっ飛んだ案を発表しました。

それはまさしくヒトデナシにしか思いつけないグロテスクな考えです。なぜならそこには、イスラエルに痛めつけられた人々への憐憫の情がひとかけらもないからです。

まさに金のためなら何でもする“不動産開発業者“の発想でしかありません。アメリカ合衆国大統領の戦略的思考とはとても言えません。

人間を人間と見なせない者は人間ではない。

それがトランプ大統領の「ガザの住民を全て排除して“中東のリビエラ”にする」という発言を聞いたときの筆者の率直な思いでした。

潰滅したガザを、故郷を、追い出されるパレスチナ人は、なんと哀れで何とも屈辱的な存在ではないでしょうか。

ところが行き場を失くしたパレスチナ人の中には、悲しいことにトランプ大統領の提案を受け入れる者も出るだろうと見られています。

ガザの疲弊はそれほどに深く徹底したもので、回復不能とさえ考えられているからです。

ガザを壊滅させたのは、トランプ大統領の発言をニヤニヤ笑いながら隣で聞いていたネタニヤフ首相です。

彼はまるで米大統領の発言を引き出すために、ガザの破壊と殺戮を実行したようにさえ映りました。

ネタニヤフ首相と、パレスチナの消滅を熱望するイスラエル内外のウルトラ極右シオニストらの罪は深い。

住民を追い出してガザをリゾート地に作り変えようという案は、政権内の高官らが集い意見を出し合ってじっくりと練ったものではなく、トランプ大統領独自のものらしい。

いかにも“不動産開発業者”トランプ氏が思いつきそうなアイデアですが、恐らくその前に、娘婿のジャレッド・クシュナー氏の入れ知恵があったのではないか、とも言われています。

ユダヤ人のクシュナー氏は、パレスチナを地上から消すと考える同胞と同じ立場で、ガザを開発して金を儲けると同時に、そこの住民をイスラエルのために排除したいと願っているとされます。

自らの家族と金儲けのためにはひとつの民族を浄化することさえ辞さない、という考えはすさまじい。トランプ一族の面目躍如というところではないでしょうか。

皮肉なことにトランプ氏のアイデアは、その非人間的な側面を敢えて脇において観察すれば、ある意味天才的とも呼べるものです。邪悪でユニークな思いつきなのです。

徹底的に破壊されて瓦礫の山と化し、もはや人が住めない状況にまでなっているガザ地区を、米軍を中心とするアメリカの力で整理して立て直す。

それは他国の内政には首を突っ込まない、というトランプ大統領の「アメリカ第一主義」に反する動きになるでしょう。

だがガザ地区をアメリカが一旦支配して元通りに整備する、というのがガザ住民のためのアクションなら、人道的見地からもすばらしい案です。

しかし残念ながら、彼が考えているのは住民を完全無視した金儲け案です。むごたらしいまでの我欲です。

繰り返しになりますが、とても人間とは思えない惑乱ぶりです。

トランプ主義は、行き着けば自由主義社会全体の総スカンを食らう可能性があります。

そうなった場合、欧州とアラブ・アフリカ、またトランプ追従に見切りをつける見識があれば日本も、たとえば中国と手を組む可能性があり得ます。

独裁国家、権威主義政権として欧米と日本ほかの民主主義世界に忌諱されている中国ですが、トランプ主義の挙句の果ては、つまるところ中露北朝鮮にも似た恐怖政体です。

ならば“トランプ小帝王“に苛められ脅迫され続けるよりも、中国のほうが御しやすい、と自由主義社会が判断することがないとは誰にも言えない、と思うのです。

 

 

 


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