2020年2月23日19:00現在、イタリアの「COVID-19」患者数 は152に増加。北部のロンバルディア、ヴェネト、ピエモンテ、エミリア・ロマーニャ州と、中部のラッツィオの5州が感染地域です。
このうち最も感染者が多いのはミラノが州都のロンバルディア州。
ロンバルディア州とヴェネト州、ピエモンテ州の3州は、保育園から大学までの全ての学校を閉鎖し、公私に渡る集会や催し物、プロサッカーを筆頭にするあらゆるスポーツイベント、各種コンテストや祭り等々を当面の間は禁止するとしました。
ミラノのスカラ座を始めとする劇場や映画館、各種娯楽・歓楽施設も閉鎖します。また2月25日まで続くはずだったベニスカーニバルも即座に打ち切りとなりました。
またカフェやバールやパブやワインバーなどの営業は午後6時までに。ただしレストランは今のところは規制しません。だが状況によっては、明日にでも全ての店の閉鎖命令が出るものと考えられます。
厳しいように見えるそれらの措置は、過去にペスト流行の悪夢などを経験しているイタリアの基準では実はゆるい類の規制です。
今回、突然ウイルス流行の爆心地となったロンバルディア州の10の自治体と、欧州初の死亡者が出たヴェネト州の1つの自治体は、人の出入りを含む一切の活動が禁止・封鎖されました。
合計人口が5万人になるそれら11の自治体は、24時間態勢で警察の監視を受け軍隊もスタンバイします。つまりそこは、ほぼ戒厳令下に置かれることになったのです。
ほぼ戒厳令下に置かれているのは、筆者の住まいから遠くない地域です。筆者はロンバルディア州の住人なのです。
そればかりではありません。もうひとつの戒厳令発動地であるヴェネト州も、ロンバルディア州の隣接地です。ウイルス話や封鎖は他人事ではないのです。
さて、ここからはウイルスパニックにまつわるこぼれ話を記します。
事態が悪化すれば、筆者の住む村のあたりもたちまち“ほぼ”戒厳令下の状況に置かれる可能性が出てきました。そこで念のために明日にでも食料の買出しに出よう、と先刻妻と話し合いました。
ミラノから近く、筆者も息抜きのためにひんぱんに訪ねるスイスは、イタリア人通勤者を締め出さない、と表明しました。
スイスにはまだコロナウイルス感染者は出ていません。ところがイタリアのウイルス感染爆心地のロンバルディア州からは、多くのイタリア人が国境を越えてスイスに仕事に向かいます。
だからスイス政府は、イタリアの不安をやわらげようとして、わざわざそうコメントを出したのです。
一方、南部イタリアのナポリ湾に浮かぶ有名リゾート地のイスキア島は、北部のロンバルディア州人とヴェネト州人、また中国人の入島を拒否する、とわざわざ宣言しました。
ナポリもイスキア島も大好きな、且つロンバルディア州住民で中国人にも親近感を持つアジア人の筆者は、イスキア島の怖い主張に心が萎えました。
外国のスイスとはずいぶん違う対応だと少し悲しくもなりました。
新型コロナウイルス「COVID-19」」は厄介です。実にうっとうしく恐怖でもあります。だがもうひとつの真実も決して忘れてはなりません。
つまり「COVID-19」」は、今この時も世界中で蔓延しているインフルエンザに比べた場合、より小さな脅威です。インフルエンザの方がはるかに巨大な殺人疾患なのです。
それでも「COVID-19」が大問題であるのは、治療法が分からずワクチンもないからです。またその状況でウイルスが突然変異して、人類の制御力の及ばない死のパワーを獲得する可能性があるからです。
要するにわれわれは、ウイルスの正体が分からないからそれを恐れるのであり、また恐れなければなりません。それは真っ当な態度です。
だがイスキア島の態度は真っ当ではない。なぜなら島は、正体が分からないウイルスと正体が明らかな北部イタリア人と中国人を、敢えて一緒くたにして全て「分からないもの」と見なしているからです。
「分からないもの」ですから、島は北部イタリア人と中国人を差別するのです。それは間違っています。
だが残念ながら、ウイルス・パニックは今後、世界中でイスキア島の誤謬と同じ現象や動きやトレンドをひんぱんに引き起こす可能性が高い。
その意味では「COVID-19」の真の恐怖は死の恐怖ではなく、それの蔓延によって人々の差別意識があらわになる現実であるのかもしれません。
※オリジナル記事2月24日 なかそね則のイタリア通信 より加筆転載
official site:なかそね則のイタリア通信