マフィアの壊滅はあり得るか

マフィアの最後の大ボスとも呼ばれる、マッテオ・メッシーナ・デナーロが逮捕されました。

デナーロは悪名高いトト・リイナの弟子。リイナとその後継者のベルナルド・プロヴェンツァーノが収監された2006年以降、逃亡先からマフィア組織を統率していたとされます。

デナーロはリイナが逮捕された1993年に逃亡。以後30年に渡って潜伏を続けました。

彼はシチリア島の反マフィアの急先鋒だったファルコーネとボルセリーノ両判事の爆殺に加わり、ミラノ、フィレンツェ、ローマの連続爆弾事件の共犯者とも目されています。

また1996年には裏切り者への報復として、彼の12歳の息子を誘拐し殺害して酸で溶かすという凄惨な事件にも関わりました。

2010年前後にはシチリア島の中心都市パレルモで、デナーロ の顔を建物の壁に描いた落書きが出現して大きなニュースになりました。

壁の似顔絵は、デナーロの逮捕が近いことの現われなのではないか、と筆者はそのとき密かに思いました。

マフィアの大物の逮捕が近づくと、 逮捕されるべき男に関する不思議な話題が突然出現したりするのです。

だが何事もなく過ぎて、彼の行方はその後も杳として知れませんでした。

閑話休題

1992年5月23日、シチリア島のパレルモ空港から市内に向かう自動車道を高速走行していた 「反マフィアの旗手」ジョヴァンニ・ファルコーネ判事の車が、けたたましい爆発音とともに中空に舞い上がりました。

マ フィアが遠隔操作の起爆装置を用いて500キロの爆弾をさく裂させた瞬間です。  

90年代初頭のマフィアは、判事を爆殺し国家に挑戦するとまで宣言して得意の絶頂にいました。だがそこは組織の転落の始まりでもありました。

判事の 殺害は民衆の強い怒りを呼びましだ。

イタリア中に反マフィアの空気がみなぎり、司法は世論に押される形で犯罪組織への反撃を開始。

翌93年1月、ほぼ4半世紀に渡って潜伏、逃亡していた、ボスの中の大ボス、トト・リイナを逮捕しました。  

シチリア島のマフィアは近年、イタリア本土の犯罪組織ンドランゲッタやカモラに比べて影が薄い。

マフィアはライ バルに「最強者」の地位を奪われているようにさえ見えます。だが、実態は分からない。

マフィアは地下に潜り、より目 立たない形で組織を立て直している、と見る司法関係者も多くいます。

現にコロナパンデミック禍中には、マ フィアが困窮した人々を助ける振りで、彼らを食い物にする実態も明らかになりました。

メッシーナ・デナーロが逮捕された今、マフィアの息の根が止まるのではないか、という希望的観測もあります。

しかしマフィアの絶滅が近いとはまだと ても考えられません。 それは文字通りの楽観論。大きな誤謬ではないかと思います。

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