欧米の多くの心ある人々が呆気に取られた岸田首相の5ヶ国パフォーマンス歴訪は、5月のG7へ向けての日本式の根回しという思惑があったのでしょうが、他者の都合を顧みない無神経と滑稽感がてんこ盛りで見苦しかった。
G7会議に向けて根回しをするとは“会議についての会議をする“ということであり、その間抜け振りは噴飯を通り越して見ている者が恥ずかしくなるほどでした。
日本の情勢に詳しい人々は、岸田首相が国民多数の反対を無視して強行した安倍国葬や統一教会問題など、多くの内患の煩わしさを癒そうとして外遊に逃げた、と喝破しました。
岸田首相は、外遊の目的を「各国首脳と法の支配やルールに基づく国際秩序を守り抜く基本姿勢を確認し、(中露北朝鮮がかく乱する)東アジアの安全保障環境への協力を取り付ける」などと語りました。
だがそれらはこれまでに繰り返し話し合われ、確認し合い、同意されてきた事案です。のみならずG7でもまた文書や口頭で傍証する作業が行われるのがは確実です。会議前に論証する意味はありません。
多忙な折に、敢えて戸別訪問をして「サミットをよろしく」と触れ回るKYな岸田首相は、5ヶ国の首脳の皆さんにとってはさぞ迷惑なことだったでしょう。
だが人笑わせな5ヶ国歴訪にはひとつだけシリアスな動機があり、岸田首相はそのことを隠すために無体な外遊をした、ということも考えられないではありません。
それはつまりロシアによるウクライナ侵略(侵攻ではない)をきっかけに、日本が中露北朝鮮からの軍事的脅威に対抗して軍拡を進めることを、アメリカに認めてもらうよう交渉する、ということである。
岸田首相がその重大なプロセスをカムフラージュするために、アメリカ訪問の前に英仏伊カナダを歴訪したとしたらどうでしょうか。
ロシアの脅威を目の当たりにした欧州では、EU加盟国を筆頭に軍事費を急速に拡大する流れが起きました。中でも、戦後は平和主義に徹してきたドイツの軍事費が、一挙に増大したことが注目されました。
のみならずナチスドイツにアレルギーを持つ欧州が、将来彼らの脅威となるかもしれないドイツの変貌を実に易々と黙認したのです。
ドイツは第2次大戦を徹底総括し、過去のナチスドイツの犯罪を自らのものとして認め、 反省に反省を重ねて謝罪し、果ては「ナチスドイツの犯罪の記憶と反省はドイツ国家のアイデンティティの一部」とさえ認定しました。
日本は欧州の情勢も見つめつつ、中露北朝鮮のうち特に中国の覇権主義に対抗するため、という大義名分を掲げて防衛費の大幅増額を決めました。
加えて米韓インドなどと提携して三国の封じ込めを画策。そこに欧州の協力も取り付けようとしています。
核兵器の製造・保有とまではいかないでしょうが、日本への持ち込みの容認、さらにはアメリカとの核の共有などを含めた抜本的な政策転換を目指していても不思議ではありません。
結果、アジアには軍拡が軍拡を呼ぶ制御不能な状況が訪れようとしています。
日本はこれまでのところ戦争を徹底総括せず、直接にも間接的にも過去の侵略戦争を否認しようと躍起になっています。
それはネトウヨ・ヘイト系俳外差別主義者の一般国民、また同種の政治家や財界人や文化人また芸能人などに支持されて、近隣諸国との摩擦や軋轢を招き続けています。
その意味では、日本が軍拡を進めるのはドイツのそれよりもはるかに危険な事態です。アメリカはそのことを十分に認識しつつ、中国・ロシアへの対抗軸として日本を活用しようとしています。
それは過去に学ぼうとしないアメリカの独善的な態度であり、将来に大きな禍根を残す可能性も高い。
そうではあるものの、しかし、欧州の状況と東アジアの安全保障環境に鑑みて、日本が防衛力強化に踏み切るのはやむを得ない成り行きとも見えます。
日本は自由と民主主義を死守しようとするアメリカほかの友好国と連携しながら、慎重に防衛力を維持するべきです。
その際に日本が強く意識しなければならないのは、今でも多大な基地負担に苦しんでいる沖縄の島々を安全保障の名の元に再び犠牲にしないことです。
南西諸島の西南端の島々では既に、狭い土地に自衛隊基地や部隊がひしめく自然・環境破壊が着々と進められています。次は戦闘による人的破壊があるのみです。
沖縄の人々は、抑圧と差別と一方的な犠牲を再び受け入れてはなりません。
中央政府の対応を監視しつつ、今こそ自己決定権を行使するための決死のアクションを含めた、強い真剣な生き方を模索していくべきです。
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