秘められた人種差別が真のパンデミック

黒人のジョージ・フロイドさんが、白人警官の膝で首を圧迫されて死亡した事件に触発された人種差別反対の抗議デモは、アメリカから欧州に伝播して拡大。特に英独仏等で大きなうねりとなっています。

フロイドさんがミネアポリスで殺害されたちょうど同じ日に、ニューヨークではある意味でそのフロイド事件よりも重大な意味を持つ出来事がありました。

英BBCが報告した白人女性による人種差別事件がそれです。記事に挿入されたMelody Cooperさんのツイートのリンク先をここに貼付します。

https://twitter.com/melodyMcooper/status/1264965252866641920

事件はニューヨークのセントラルパークで起きました。

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黒人のクリスチャン・クーパーさんは、「犬は常にリードにつないでおかなければならない」と明確にサインの出ている場所でバードウォッチングをしていた時、リードから放たれて駆け回る犬を見ました。

野生生物が危険にさらされると恐れた彼は、飼い主らしい女性に「お嬢さん、このあたりでは犬をリードでつないでおかないといけませんよ。すぐそこにサインがあるでしょう」と伝えました。

しかし女性が無視(拒否)したので彼は動画で撮影を始めました。すると女性は逆上して「撮影をやめて。でないと黒人が私の命を脅かしている、と通報する」とクーパーさんに噛み付きます。

クーパーさんがどうぞ、なんとでも伝えてください、と言うと女性は犬の首輪をつかみつつ警察に電話。その際の彼女の口振りを忠実になぞると:

女性(マスクをはずして電話に):(セントラルパークの)散策場(ランブル)で黒人が私を撮影しながら私と犬を脅しています。

(正確には「African・Americanman:アフリカ系アメリカ人男性」と発音しているが、敢えてアフリカンを付けることで、黒人であることをもっとさらに強調しようとする意図がはっきり見える)

女性(嫌がる犬を無理やり押さえつつ、繰り返す):セントラルパークにいます。黒人が私を撮影しながら私自身と犬を脅しています。

女性(犬が騒ぎ、ひと声吠えるのを無理やり押さえ突然泣き声になって):よく聞こえません。セントラルパークの散策場にいます!男に脅迫されています!すぐに警官を送ってください!

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規則違反を指摘されて、恐らく羞恥心も働いたであろう女性の心理も分からないではありませんが、彼女の嘘と演技と威嚇にはおどろかされます。

一歩間違えば女性の電話を受けた警察官が駆けつけ、うむを言わさずにクーパーさんを射殺していたかもしれません。

それは少しも大げさな指摘ではありません。アメリカではそんなことが日常茶飯に起こっています。ジョージ・フロイドさんの殺害も同じ土壌で発生したのです。

ちょっとしたことで表に出てしまった彼女の黒人(恐らく白人以外の全ての人種)蔑視の心情は、残念ながら少なくない国の、特にアメリカの白人の中に秘められた現実の一つだと思います。

それは今に始まったことではなく常に存在しましたが、トランプ大統領の出現で米国人のほぼ半数(主にトランプの岩盤支持層)が、そうした人々であることが暴露されました。

そのことへの抗議デモが今各地で起こっているわけですが、トランプ大統領が依然としてそこにいて且つ彼の岩盤支持層の割合が減らない現実は、差別の撤廃がいかに至難であるかを如実に物語っています。

だからと言って声を上げなければ、差別の解消どころか、そこへ向けての「きっかけ」さえ生まれません。その意味でいまアメリカから世界に広がりつつある黒人差別への抗議デモはきわめて重要なものです。

 

 

 

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