2020米大統領選が盛り下がるわけ

今のところ何かを書く気も起こらないほど11月の米大統領撰の影が薄い。9月末に予定されているバイデン、トランプ両候補の討論会が行われれば、状況は少し変わるのかもしれません。それまで何も書かずにおこうかと思いましたが、実際に状況が変わってしまう前に今の低空飛行気分を書いておくのも意味があるかも、と思い直しました。

選挙キャンペーンが盛況にならないのは新型コロナの感染拡大が止まず、大きな集会や演説会などができないのが最大の理由なのでしょう。オンラインやテレビ広告などに頼るだけの選挙運動では人々の熱気は期待できません。

個人的にはトランプ、バイデン両候補の魅力のなさが盛り下がりに一役買っています。両者ともに意外性がない。2016年の選挙時こそ、トランプ候補の常軌を逸した言動やキャンペーン、憎しみや分断をあおる敵意満載の行動様式が、驚きや反感や逆に喝采を浴びたりして、面白いドラマが展開されました。だが柳の下に2匹目のドジョウはいません。

トランプ氏の選挙また政治手法は多くの常識を覆しました。いわば北朝鮮の金正恩書記長や中東諸国の独裁者や独裁政権、はたまた中国共産党的厚顔や傲岸や無礼、南米の強権レジームなどのやり方や信条やコンセプトと良く似た野蛮な行動規範で、彼は支持者を獲得していきました。

しかし彼の当選はあり得ないと多くの人々が考え、主張し、分析し結論付けていました。筆者もそのひとりでした。だがトランプ氏はそれをあざ笑うかのように当選を果たしました。そこではアメリカ国民のおよそ半数がれっきとした排外差別主義者であり、ネトウヨヘイト系の白人至上主義者であり、強硬且つ好戦的な民族主義者であることが明らかになりました。

それらの人々がトランプ氏のいわゆる岩盤支持層です。その数がアメリカ国民のおよそ半数にのぼるという想定外の真実は、世界の良識に大きな衝撃を与えました。その状況はほぼ4年が経とうとする今も変わらず、バイデン候補有利の世論調査もすぐには信用できません。岩盤支持者がいる限り、且つその数が有権者の半数に迫る数字であり続ける限り、トランプ再選のシナリオは常に現実味を帯びています。

勝負はひと言でいえば、曲者トランプvs退屈バイデン。嘘と詭弁と差別主義とはったりが得意な現職大統領と、無難で平凡で牙のない“似非反中国(実は中国寄り”のリベラル、あるいは少なくとも中国と事を荒立てたくないのが本心)”主義者の元副大統領の一騎打ちなんてつまらない。展開が見え透いていて驚きがありません。

トランプ候補は不快で政治的に危険な存在ですが、基本的に反中国主義。少なくとも中国の覇権主義への強い警戒心感と敵意を隠さずに次々と手を打つところは共感できます。選挙目当てのハッタリの要素が強いことは、香港問題やウイグル争議などの政治命題に口先だけの介入をして済ませていることで分かります。

そんなトランプ候補に人権や民主主義や、自由や寛容の精神の発露や理解を求めても詮無いことです。それでも、せめて中国への咆哮だけは続けてほしい。それに欧州や日本やその他の「民主主義常識国」が加勢すれば、さすがの厚顔無恥また横柄な中国も勝手気ままはできない。少なくともかの国へのけん制にはなります。

だがバイデン候補が大統領になれば、中国と仲良くしようとするばかりで、結果中国が付け上がり続けるだけの構図が復活するでしょう。バイデン候補は中国に対峙する姿勢を打ち出していますが、あまり期待できません。

中国とはむろん対話を模索し協力関係を構築するよう心がけるべきです。が、同時に中国の人権無視と覇権主義と独裁主義に塗り固められた横暴な行為の数々は阻止されるべきです。国際秩序を無視する国が、国際社会にのさばっていてはならないのです。

しかしバイデン氏には中国を抑えこむ意志も力量もないのではないか。片やトランプ大統領は少なくともそれを「試行する」強い意志を示しています。たとえそえが自己本位の且つ選挙キャンペーンの色合いが濃いものであっても、その点は評価できます。とは言え分断と憎しみと差別をあおる狂気じみた政治姿勢はやはり見苦しい。結局筆者は2016年の選挙と同じで、消去法でバイデン氏を支持します。米大統領選で積極的に支持できる候補はもう永遠に出ないかもしれません。

そう考える理由があります。全くの希望的観測なのですが、筆者は2016年までは、自由と民主主義と機会の均等と人権擁護を血肉の奥までしみこませた国民が、アメリカの有権者の8割ほどを占めると漠然と考えていました。残りは1割がネトウヨヘイト系排外差別主義の白人優位論者、つまりトランプ候補の岩盤支持者たち。残りの1割が政治に無関心な無為の若者やアナキストやリベラル過激派など、などと感じていました。

だがトランプ氏の登場で、ネトウヨヘイト系排外差別主義の白人優位論者は、アメリカ国民のほぼ半数を占めるという衝撃の事実が明らかになり、その情勢はトランプ政権が4年続いた今も全く変わっていません。それを見てアメリカへの筆者の100年の恋は一気に冷めています。が、それでも、アメリカはいまだに世界最強の「まがりなりにも」の民主主義国家です。

したがってその意味での信頼は変わりません。筆者のアメリカへの全き愛と尊敬と親和心は冷めてしまいましたが、世界の民主主義と自由と希望のために、アメリカに偉大な指導者が生まれ、欧州や日本などと協調してその理念のために前進する米大統領が生まれることを願います。だが、それは残念ながらバイデン候補ではありません。ましてやトランプ候補であることなど世界が逆立ちしてもあり得ません。

 

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