コロナ第2波入り口の欧州事情

イタリア政府はコロナ感染拡大第2波のうねりに対抗して、レストランや飲み屋やカフェの営業を18時までとする命令を出しました。するとこれに反対する店のオーナーや従業員や共感者が北部のミラノやトリノまた南部のナポリなどで抗議デモを行いました。このうちトリノでは一部が暴徒化して通りの店を壊すなどしました。

イタリアは第1波で惨劇に見舞われ、レストランなどの飲食業や宿泊業また観光業の全体が手酷い被害を蒙りました。ロックダウン(都市封鎖)が解除された後、それらの業界は少しの回復を見ましたが全面復興には程遠い状況です。そこに第2波とそれを受けての厳しい規制がきました。悲鳴を挙げた人々は通りに飛び出して抗議行動を起こしました。

だが彼らの異議は、日本を含む一部の外国メディアが、あたかも激しい暴力行為を孕んだ動きのようなニュアンスで伝えた内容ではありません。彼らは基本的に政府の管制を受け入れています。苦しい立場を明らかにしてできれば補償や援助を引き出したい、という胸の内が見て取れました。第1波の地獄を体験したイタリア国民は、厳しい規制だけがコロナの感染拡大の歯止めになることを知っています。

第2波の勢いがイタリアよりもはるかに深刻なフランス、スペイン、イギリスなどの欧州主要国と多くの周辺国では、ロックダウンも念頭に置いたさまざまな制限が導入され始めています。

例えば累計の感染者が120万人を超えて欧州最多となったフランスは10月22日、パリを含む9都市で実施してきた夜間外出禁止令を、38の地域と南太平洋ポリネシアのフランス領にまで対象地域を拡大しました。外出禁止措置は6週間続けられます。が、その前に全土のロックダウンが導入される可能性も高いと思います。

感染者数が欧州で初めて100万人を超えたスペインは、カナリア諸島州を除く全土を対象に緊急事態を宣言。夜間外出禁止令を発動しました。また家族の集まりは公私を問わず6人までに制限する、という家族重視のカトリック教国らしいルールも布告しました。同じカトリックの国のイタリアやフランスでも似通った束縛が課されます。また各州はそれぞれが州を跨いだ住民の移動を禁止してもよい、という権限を付与されました。

欧州で新型コロナの死者が最も多いイギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの各地域(国)が独自のコロナ対策を敷きます。加えてミニ・トランプのボリス・ジョンソン首相が独断と思い上がりが濃厚な施策を取りがちなため、混乱が著しく感染拡大を止める有効な手段がありません。

例えばイングランド北西部のリバプールなどではパブやバーが終日閉鎖されているのにレストランや商店の営業は認められていたり、南西部の ウェールズでは午後6時以降に飲食店が一斉に店を閉める「ファイヤー・ブレイカー」という規制が課せられていたりします。統一性がないことがイギリスの感染拡大を後押ししている、という見方もできそうです。

ドイツはコロナ対応でも例によって優等生振りを発揮しています。それでも1日の感染者が過去最多を更新するなど感染者が急増していて、伝統的なクリスマス市場の開催を取りやめる動きが全国で拡大しています。

そうした状況に対応するためメルケル首相は、地域限定のロックダウンを計画していると見られています。ロックダウンは全土で全面的に実施しなければあまり効果がありません。しかし日本同様にお上に従順で四角四面な国民が多い同国でなら、あるいは意外にも高い成果が期待できるかもしれません。

またギリシャは首都アテネなどに夜間外出禁止令を出し、オランダはバーやレストランを閉鎖。ベルギーの首都ブリュッセルでは、商店の営業は午後8時間までに制限され、スポーツジムやプールの営業も禁止されています。

人口1000万人に過ぎないチェコは、10万人あたりの新規感染者数が欧州で最悪。いわば日本の沖縄県状態です。厳格なマスク着用令が敷かれ、自動車内でさえマスクを付けなければならなりません。また10月22日からは店舗などが閉鎖され、移動の自由も大きく制限されて食料の買い付けや病気以外での外出は厳禁となっています。


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official siteなかそね則のイタリア通信




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