ジューン・バカンス

世界はコロナ禍で苦しんでいます。途上国の多くがワクチンを入手できず、先進国の日本も五輪開催を希望しながらワクチン政策の失敗もあって呻吟しています。

ここ欧州は、昨年のイタリアのコロナ地獄に象徴されるように世界最悪の部類の被害をこうむり、いまも苦悩しています。

しかしワクチン接種プロジェクトがうまくすすんで、トンネルを抜けだしつつあります。ことしは夏のバカンスも、コロナ以前の状況に近いにぎわいを見せるのではないか、と期待されています。

そうなることを期待しつつ、暗いニュースばかりのありさまをあえて忘れて、ここイタリアのそしてまた欧州の夏のバカンスのたたずまいの一部を見てみましょう。

ジューン・ブライドという言葉があります。ジューンは6月、ブライドは花嫁。「6月の花嫁は幸せになる」という意味の英語です。

ギリシャ神話から出た古代ローマ神話のうちの、結婚の女神JUNO(ジュノー)に由来します。

語源を季節や農作業に結びつけて探る考え方もあります。菜園をたがやす筆者もそれを気候にからませて見たいほうです。

ジューン・ブライドは、結婚式を「光がまぶしく空気がさわやかな6月」に行えば花嫁がうるわしく輝く、という意味にも取れると思います。

梅雨でうっとうしい日本とは違って、ヨーロッパの6月は暑くなく寒くなく、かつバラなどに代表される花々が咲きみだれる1年でもっとも美しい季節なのです。

アサリ&ボッタルガ800

ところで筆者にとっては6月は、例年ジューンブ・ライドならぬ「ジューン・バカンス」の季節です。

ここイタリアを含むヨーロッパのバカンス期は、6月にぼちぼち始まって7月に加速し、8月のピークを経て、9月いっぱいをかけてゆるゆると終息する、というふうです。

ただし、ギリシャとギリシャ以南の地中海のリゾート地は、10月もまだ十分に暑くバカンス客が多く滞在している光景も見られます。

そんな中での最適なバカンス時期は6月だと筆者は思っています。

花が咲き誇る地中海の島々や内国の初夏は雨が少なく、しかも夏時間のまっ最中ですから、南欧でも昼がいちばん長い季節。

その気になれば夜の8時、9時までビーチで過ごすこともできます。さらにビーチの後で食事や遊びにくり出す夜の歓楽街の風は、暑い7月や8月とは違って涼しい。

またバカンス最盛期ではないその時節は人出が少ない。そのこと自体も好都合ですが、人が混みあわない分ホテルやビーチ施設の料金など、あらゆるものの値段も安い。

良いことずくめなのです。

6月のバカンスの欠点は、普通の勤め人には休みをとるのが難しいという点です。欧州全体もまたイタリアも、サラリーマンが休めるのはやはり圧倒的に8月が普通なのです。

サントリーニ、pool船見下ろし800

 
筆者はドキュメンタリーや報道番組を手がけるフリーランスのTVディレクターです。

そんなヤクザな商売をしているおかげで、6月以外の季節に普通以上に頑張って仕事をする代わりに、皆が休めない時間に休めるという幸運に恵まれてきました。

そういうわけでことしも間もなく休暇に向かいます。2回のワクチン接種も受けましたので可能になりました。ワクチンがなければとてもかなわなかったことだろうと思います。

最近はほぼ毎年ギリシャで過ごしますが、コロナで痛めつけられたイタリアの観光業者の皆さんを支援する意味を込めて、今回は外国には出ず南イタリアを目指します。

24号アパートベランダ800

イタリアにも日本にもそして世界にも、困窮している人々が無数にいます。そんな折にバカンスに出るのは不謹慎かもしれません。

だが一方で、バカンス客や観光客がいないために大打撃を受けている観光業界や、飲食業界などの皆さんにとっては朗報です。できるだけポジティブに考えることにします。

来年以降はコロナ禍が終息して、ふだんのようにギリシャにも自由に渡れることを願っています。

イタリアは全体が一級のバカンス・リゾート地です。

ギリシャはその上を行く、いわば超一級のリゾート地です。地中海における位置関係が2者の違いを生みます。

地中海では西部よりも東部のほうが乾燥していて気温も高くなります。

たとえばイタリア半島の西にあるサルデーニャ島とエーゲ海の島々では、後者のほうがより高温で乾いています。

乾燥していて気温が高ければ、空気が澄んで空が青い。

空が青ければ海はなお青い。

サルデーニャ島よりも、ギリシャの島々の空と海がより深い青に見えるのは、それが理由のようです。

 

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