ウクライナ戦中に祝うイタリアの終戦記念日

毎年4月25日はイタリアの「解放記念日」です。

解放とはファシズムからの解放のことです。

日独伊3国同盟の仲間だったドイツとイタリアは、第2次大戦中の1943年に仲たがいしました。3国同盟はその時点で事実上崩壊し、独伊は険しい敵同士になりました。

イタリアでは、ドイツに抵抗するレジスタンス運動が戦争初期からありましたが、仲たがいをきっかけにそれはさらに燃え上がりました。

イタリアは同時に、ドイツの傀儡政権である北部の「サロ共和国」と「南部王国」との間の激しい内戦にも陥りました。

1945年4月、サロ共和国は崩壊。4月25日にはレジスタンスの拠点だったミラノも解放されて、イタリアはムッソリーニのファシズムとドイツのナチズムを放逐しました。

つまり4月25日はイタリアの「終戦記念日」。

掃滅されたはずのイタリアのファシズムは、しかし、種子として残りました。それは少しづつ土壌と湿りを獲得して、やがて発芽しました。

芽は成長し、極右政党と規定されることが多い「同盟」と、ファシスト党の流れを組むまさしく極右政党の「イタリアの同胞」になりました。

「同盟」はトランプ主義と欧州の極右ブームにも後押しされて勢力を拡大。2018年、極左ポピュリストの「五つ星運動」と組んでついに政権を掌握します。

コロナパンデミックの中で連立政権は二転三転しました。だが「同盟」も「イタリアの同胞」も支持率は高く、パンデミック後の政権奪還をにらんで鼻息は荒い。

彼らは自らを決して極右とは呼びません。中道右派、保守などと自称します。だが彼らはウクライナを蹂躙しているプーチン大統領を賞賛しトランプ主義を信奉して止みません。

極右の頭を隠したがりますが、尻がいつも丸見えなのです。

彼らは今日この時は、特にその傾向が顕著です。プーチン・ロシアがウクライナで残虐行為を働いていることに激しい批判が起きたため、一斉にプーチン大統領と距離を置くポーズを取っています。

しかしながら、それは死んだ振りに過ぎません。

彼らはフランス極右の「国民連合」 とも連携し欧州の他の極右勢力とも親しい。それらの極右勢力も、プーチン大統領との友誼を必死に隠匿しようとしているのは周知の通りです。

極右はファシストに限りなく近いコンセプトです。しかし、イタリアの極右勢力をただちにかつてのファシストと同じ、と決めつけることはできません。彼らもファシトの悪を知っているからです。

だからこそ彼らは自身を極右と呼ぶことを避けます。

第2次大戦の阿鼻地獄に完全に無知ではない彼らが、かつてのファシストやナチスや軍国主義日本などと同じ破滅への道程に、おいそれと迷い込むとは思えません。

だが、それらの政治勢力を放っておくと、やがて拡大成長して社会に強い影響を及ぼします。あまつさえ人々を次々に取り込んでさらに膨張します。

膨張するのは、新規の同調者が増えると同時に、それまで潜行していた彼らの同類の者がカミングアウトしていくからです。

トランプ大統領が誕生したことによって、それまで秘匿されていたアメリカの反動右翼勢力が一気に増えたように。

政治的奔流となった彼らの思想行動は、急速に社会を押しつぶしていきます。それは日独伊のかつての極右パワーの生態を見れば火を見るよりも明らかです。

そして奔流は世界の主流となってついには戦争へと突入します。そこに至るまでには、弾圧や暴力や破壊や混乱が跋扈するのは言うまでもありません。

したがって極右モメンタムは抑さえ込まれなければなりません。激流となって制御不能になる前に、その芽が摘み取られるべきです。

では権力を握った極右の危険の正体とはいったい何でしょう?

それは独裁者の暴虐そのもののことです。ロシアの独裁者、プーチン大統領がウクライナで無差別殺戮を繰り返しているように、極右政権は自国民や他国民をいとも簡単に虐待します。

ウクライナ、またロシア国内の例を見るまでもなく、人類の歴史がそのことを雄弁に物語っています。

イタリアは今日、解放記念日を祝います。ファシズムとナチズムという専制主義を殲滅したことを称揚するのです。

それは将来ウクライナの人々が、プーチンという独裁者を地獄に追いやる時の儀式にも似ているに違いありません。

ウクライナの4月25日を筆者はイタリアの地で待ちわびています。

 

 

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official siteなかそね則のイタリア通信

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