新聞に次の趣旨の短いコラムを書きました。
~イタリアの宿命~
イタリア政府は、欧州の新型コロナ対策では最も長く最も厳しいロックダウンを、6月3日に全面解除すると発表した。
人々の動きが自由になり店やレストランや工場やオフィスなど、ビジネスの全てが解禁される。EU域内からの外国人の入国も許可される。
ただし新型コロナウイルスの感染拡大が再確認されれば、即座にロックダウンに移行する、という条件付きである。
イタリアでは2月21日~23日にかけて感染爆発が起き、たちまちコロナ地獄に陥った。
ウイルスとの長い厳しい戦いを経てイタリアは危機を抜け出しつつある。だが依然として死者数も感染者数もゼロではない。
一方、状況が劇的に改善していることもまた事実だ。
それを受けてのロックダウン解除だが、実施前の特に週末には、イタリア中の街や海やその他の歓楽地に人々がどっと繰り出して、良識ある国民の警戒心を一気に高めた。
北部イタリアのいくつかの街はただちに繁華街を閉鎖さえした。
それとは逆に感染者の少ない南部イタリアのナポリ市長は、歓楽街や施設は閉鎖するよりも開放するほうが人が密集しないから安全、という屁理屈を持ち出して人々の行動を擁護した。
さまざまな意見や主張や行動様式が乱舞するのが、多様性に富むイタリア社会の良さであり強みである。
多様性は人々に精神の解放をもたらし発想の自由を鼓舞する。
誰もが自説を曲げずに独自の道を行こうと頑張る結果、イタリアにはカラフルで多様な行動様式と、あっとおどろくような 独創的なアイデアが国中にあふれる。
だがそれは時として社会的な混乱ももたらす。多様性を死守しつついかにしてカオスを抑えるか。イタリア共和国の永遠の課題である。それはコロナ危機の中でも変わらない。
official site:なかそね則のイタリア通信