コロナ第2波の足音が聞こえる

イタリアが世界一のコロナ地獄におちいったのは2月。寒いころでした。コロナ地獄は3月、4月と悪化し5月になって少し落ち着きを見せました。イタリア政府は5月から段階的にロックダウンを緩和し、6月には全面的に解除しました。

7月の今はコロナの勢いは衰えたように見え、国内の社会経済活動がほぼ普通に戻りました。だが新規の感染者は恒常的に発見されていて終息には程遠い。それどころか個人的には筆者は第2波の襲撃は不可避と考えています。

新型コロナウイルスは第1波が去って第2、第3波が来るあるいは来ない、と語られるのが普通で筆者自身もそう表現してきました。が、実はそれは誤りで、コロナは常にそこにあって密かに増殖、つまり感染拡大を続けている、というのが正しいのではないかと考えています。

イタリアは世界最悪のコロナ禍中にいた2~3月、また4月の悪夢を経て、第1波が去り次の攻撃を戦々恐々としながら待っている、と多くの人が考えています。しかし、死者数こそ減っているものの、新規感染者はひっきりなしに発見されて累計の感染者数は確実に増えています。「第1波が去った」とは言えないように思うのです。

日本の状況も欠かさず見ていますが、イタリアよりも新規の感染者が多い状況は、やはり第1波の終焉や第2波の始まりと言うくくりよりも、コロナが常にそこにあって密かに宿りを広げている、と見たほうがいいのではないでしょうか。

2020年7月17日の状況は、イタリアよりも日本のほうがより深刻な危機にあると見えます。イタリアの感染者は世界でもトップクラスの検査数の結果として出ていますが、日本の検査数は以前よりも増えたとはいえ多くの国々に比較すると相変わらず少ない。それにもかかわらずここ最近はイタリアを上回る数の感染者が出続けているのです。

古くて、しかし常に新しい問いですが、日本の実際の感染者はやはりはるかに多いのではないか。死者数が極端に少ないことと、無症状の感染者が全体のおよそ半数にも上る、とされる新型コロナ感染の実態が現実を見えにくくしているのではないか、という疑念がどうしてもつきまといます。

2020年7月17日現在の日本の感染者数は前日比623人増です。230人の新規感染者が見つかったイタリアよりもかなり多い。このまま増大し続ければ感染爆発という状況もあり得ます。これまで危ない危ないといわれながらも感染爆発が抑えられてきた分、日本国内にいる人々はきっと不安でしょう。

しかし、ここイタリアにいてコロナ禍に「突然」且つ「深刻に」襲われ、どこからの助けも受けられないまま恐ろしい日々を過ごした体験を持つ者には、―言うまでもなく避けられればそれに越したことはありませんが―感染爆発が来ても恐るるに足らず、という思いもあります。イタリアのように医療崩壊さえ起こさなければ、苦しい中にも救いはあると考えるのです。

当時のイタリアの恐怖を今このとき味わっているのは、おそらくインド、パキスタン、イランほかの中東諸国、またブラジルとペルーに代表される南米各国などでしょう。医療体制が脆弱なそれらの国では、先進国でありながら医療崩壊に陥った際のイタリアの絶望感と恐怖に似たものを実体験しているのではないか、と容易に推察できます。

独裁国家の中国を除けば世界一過酷とされた、イタリアのロックダウンの日々はまだ記憶に新しい。そしてあの日々はきわめて高い確率でまたやって来る、と筆者はどうしても思ってしまいます。たとえあれほど厳しい規制の日々ではなくても、移動制限をはじめとする統制が導入される日が近い将来必ず来る、と考えるのです。なぜでしょうか。

ロックダウンが緩和されて以降、3密への警戒はおろかマスクさえきちんと付けない人々が、海で山で街中でまたレストランをはじめとするあらゆる歓楽施設で、集まり寄り添い顔を突き合わせて歓楽に余念がないからです。ウイルスにとっては絶好の増殖機会です。

また、2月から5月初めまでのすさまじい感染拡大は収まってはいるものの、暑い夏に入ってもイタリアの新規感染者はゼロではありません。ゼロどころか、既述のようにコンスタントに発生しています。7月に入ってからも新規感染者の数は毎日100人以上300人未満の間で推移しているのです。




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