サッカー欧州選手権の仁義なき戦い

サッカー欧州選手権は準々決勝に進む8強が出揃って佳境に入りました。

欧州選手権は番狂わせ、逆転、寝首搔き、闇討ち、だましあい、何でもござれの仁義なき戦いが面白い大会です。

言葉を換えれば出場チーム全体のレベルが高く予測不可能な乱戦が展開されるのが特徴。

いや、少し違います。

同大会やワールドカップの優勝体験国などを軸にして、誰でも展開や結果を予測をすることはできます。

だがそうした予測や期待がよく裏切られる。

だからこその乱戦なのです。また、だからこその欧州各国のサッカーのレベルの高さです。

例えばありふれた予測では、ポルトガルは二次リーグの初戦でベルギーを破るはずでした。

もうひとつのありふれた予測では逆に、ベルギーがポルトガルに競り勝つはずでした。

なぜならベルギーは最新のFIFA世界ランキングで、ブラジルやドイツなどを抑えてなんと一位にランクされているからです。

サッカーを継続して見ていない者や権威付けが好きな者は、FIFAの発表をうのみにしがちなところがあります。

一方で、割とサッカーに詳しい者はポルトガルが4年前(5年前)に優勝したディフェンディング・チャンピオンであること、あるいは世界最高峰の選手であるロナウドが所属するチームという事実などを基に、ポルトガルが有利のように見なします。

それらはいつも常に正しくまた間違っています。勝負は理論的に見渡せすこともできますが、時の運でもあるからです。

また専門家などの予測は、理路整然と間違うことがしばしばです。経済学者が実体経済の予測を理路整然と間違うように。

ゲームの予測を立てるのはほとんどの場合ムダです。確率論に基づけばある程度の正しい方向性は見つかるのでしょうが、選手とチームの心理的要素や偶然性が試合展開に大きくかかわりますから、プロでも正確な予測はできません。

それでも人は予測を立てたがります。予測することが、ゲームそのものを見るにも等しいほどに楽しい行為だからです。

当たるも八卦、当たらぬも八卦。当たれば嬉しく、当たらなければ無責任に何もなかった振りをします。

そんなわけで、筆者もサッカー好きな者の常で、ここからもっともらしく予測を立ててみることにします。

準々決勝に残ったのは強い順にイタリア、スペイン、ベルギー、イングランド、ウクライナ、デンマーク、チェコ、スイスの8強です。

筆者はイタリアを応援するばかりではなく、その強さを腹の底から認知しています。

そのことを拠りどころに正直に言えば、世界のサッカー—のランクはブラジルとイタリアがトップ。次にドイツです。

続いてフランスとスペインとアルゼンチンが横一列に並び、その下のグループにポルトガル、イングランド、オランダ、などがいる、と見ます。

今をときめくFIFA世界ランキング一位のベルギーがいないじゃないか。お前はバカか。という声が聞こえてきそうです。

だが筆者は世界のサッカー強国のランキングを言っているのであって、今この時のチームの好調ぶりを語ろうとしているのではありません。

また、ベルギーの話はさておいても、見ていて楽しい攻撃サッカーのブラジルと、カテナッチョ(かんぬき)とまで揶揄される守備主体のイタリアを同列に並べるのはナンセンス、という声も聞こえてきそうです。

その主張の意味は分かりますが、同時にサッカーの本質を忘れているとも言いたくなります。

攻撃的サッカーのブラジルのディフェンスは、フォワード陣と同様に超一級です。

同じように守備が堅固なイタリアの攻撃も超一級なのです。

だから2チームはブラジルが5回、イタリアが4回もW杯を制しています。

ドイツは2014年の第20回ブラジル大会を制して、イタリアに並ぶ4回優勝となりました。

そしてドイツサッカーもブラジルとイタリアのように強く、超一級です。

だがドイツはブラジルの自由奔放な動きにかないません。イタリアの独創性に富んだ戦術にも振り回されてよくコテンパンにやられます。

その分ドイツサッカーは、ブラジルとイタリアの下にランクされると思うのです。

近年、ポゼッションサッカーで世界を席巻したスペインは、長くW杯を制することができませんでした。

ポゼッションによって一世を風靡しましたが、世界が彼らの戦術を真似し、取り込み、改良し自家薬籠中のものにしてさらに前進した結果、スペインの衰退が訪れつつあります。

フランスも移民選手を手厚く育てることで1998年のW杯を制し大きく伸びました。だが、未だにブラジル、イタリア、ドイツの境地にまでは至っていません。

アルゼンチンの立ち位置はフランスとスペインに近いですが、2チームよりもほんの少し劣ります。

W杯を一度制しているイングランドは存在感があまりない。2度優勝した古豪ながら近年は沈んでいるウルグアイにも似ています。

今回の欧州選手権では、ここまでに強豪のドイツが敗れ去り、フランスもポルトガルも消えました。

今後は、イタリアとスペインが有利です。

勢い盛んで且つ絶好調のベルギーが準々決勝でイタリアを撃破する可能性はあります。だがそれ以上に、イタリアが地力を発揮して勝つ可能性のほうが高い、と筆者は思います。

そこには希望的観測が含まれることを否定しません。

次の優位者のスペインは、優勝候補の筆頭だったフランスを撃破して意気盛んなスイスと対峙すします。筆者はここでも強豪のスペインが優勢と見ます。

フランスとの激しい戦いを制したスイスの布陣はすばらしい。だが彼らには大舞台での活躍の経験があまりなく、且つフランスと90分+延長戦+PK戦を戦ったことによる心身の消耗が大きい。

いわば新参なだけに疲れよりも高揚のほうが優っていてむしろ有益、という見方もできるでしょうが、クロアチアを相手に5得点を挙げたスペインの底力は無視できないように思います。

イタリアとスペインが敗れた場合、勢いから推してベルギーが圧倒的に有利になりそうです。

そこに、彼らにとっては目の上のタンコブだったドイツを久しぶりに撃破したイングランドが挑む、という構図です。

過去にそれぞれ一度づつ優勝しているデンマークとチェコも侮れません。

冒頭で触れたように欧州杯はW杯と違って下剋上や逆転劇が多い。

優勝経験のないベルギー、スイス、ウクライナ、イングランドに加えて、いま言ったように優勝経験はあるものの穴馬的存在に見えるチェコとデンマークが躍動するとします。

そうなれば、今回も番狂わせ全開の仁義なき戦いが繰り広げられることになることでしょう。

ああ、ワクワク感が沸点に達しそうです。

 

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