南イタリアの異常気象の舞台裏

米気象学会は8月25日、昨年2020年のヨーロッパの気温が観測史上最高を記録したと発表しました。

それは世界でも史上3番目に入る暑さでした。

スイス、ベルギー、フランス、スペイン、スウェーデン、ノルウェーなど、欧州の17カ国で史上最高気温となりました。

一方、米海洋大気局(NOAA)によれば、ことし7月の世界の平均気温は16.73度となり観測史上で最も高くなりました。

7月は1年で地球が最も暑くなる時期。

2021年7月は例年にも増して暑くなり、142年間の観測史上で最も暑い月となりました。

そうした流れの中で2021年8月11日、イタリアのシチリア島では欧州の過去最高気温となる48,8℃が記録されました

それまで欧州で最も暑かった記録は、1977年にギリシャのアテネで観測された48℃です。

炎熱はアフリカのサハラ砂漠が起源の乾いた風と共にやってきました。

熱波と乾燥に伴って、シチリア島のみならずイタリア本土やギリシャ、またキプロスやトルコなど、地中海沿岸の国々に山火事が頻発して緊急事態になりました。

8月25日までに焼失したイタリア全土の山林はおよそ15万8千ヘクタール。

その数字はイタリアの3大都市圏ローマとミラノとナポリを合わせた面積に匹敵します。

15万8千ヘクタールは、2017年全体の焼失記録およそ14万1千ヘクタールを既に超えています。

なおイタリアでは 2018年に14,000ヘクタール、2019年には37,000ヘクタール、2020年には53,000ヘクタールの山林が灰になっています。

山火事は夏のイタリアの風物詩のような様相を呈していますが、他の国々とは違う陰鬱な顔も持っています。

ほとんどの山林火災が、放火あるいは人災として発生しているのです。

具体的には全体の54,7%が放火。13、7%が不慮あるいは人の不注意から来る事故。

一方で落雷などが原因の自然発生的な山火事は、全体の2%以下にとどまっています。

放火は多くの場合犯罪組織と結びついていると考えられています。

マフィア、ンドランゲッタ、カモラなどが、土地争いに絡んで脅迫や強奪を目的に火を点けたり、緑地を商業地に変えようとしたり、ソーラーパネル用の土地を獲得しようと暗躍したりします。

一方、犯罪者の意図的な悪行とは別に、乾き切った山野また畑地などでは火災が容易に発生します。

例えば農夫が焼き畑農法の手法で不注意あるいは不法に下草に火を放った後に制御不能に陥ります。

人々がバーベキューや炊事や湯沸かしの火を消し忘れる。

ドライバーが車の窓から火のついたままの煙草を投げ捨てて、乾き切った道路脇の枯草に引火する。

不埒な通行人が同じように煙草のポイ捨てをすることもあります。

7月から8月の間の南部イタリアはほとんど雨が降りません。山野は既述のようにアフリカ由来の高気圧や熱波に襲われて、気温が高くなり空気が極度に乾いています。

砂漠並みに乾燥した山野の枯葉や枯草は、ガソリンのように着火しやすく一気に炎上して燃え盛るのです。

犯罪や事故による山林火災は昔から常に発生してきました。近年は地球の温暖化に連れて気温が上がり、山火事がより発生しやすくなっている、とされます。

だが、南イタリアの山林火災に関する限り、気候変動を隠れ蓑にした犯罪者らの悪行のほうが、地球の温暖化そのものよりもより深刻、とさえ言えそうです。

 

 

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