メルケル首相の再就職先

9月26日、ドイツのみならずEU(欧州連合)の命運さえも左右するドイツの連邦議会選挙が行われます。

なぜEUにも「影響を与える」と表現せずにEUの「命運さえも左右する」と強い言葉を用いるかと言えば、選挙後にメルケル首相が退陣するからです。

16年間ドイツを率いてきたメルケル首相は、ドイツだけでなくEUの最大のリーダーでもありました。

それどころか、変形独裁国家の首魁であるプーチン大統領にも毅然として対峙し、トランプ食わせ者大統領が出現すると、正義と自由と民主主義の旗手として断固たる態度で彼の嘘に挑みました。

トランプ大統領の太鼓持ちだった安倍首相や定見のない英メイ首相、若いだけが取り柄の仏マクロン勇み足大統領、またただそこにいるというだけで、空気と同じ無意味な存在だった伊ジェンティローニ首相などとは大違いだったのです。

ドイツもヨーロッパもそして世界も、アンゲラ・メルケルという偉大な指導者を失う。ドイツの総選挙が行われる2021年9月26日は、そんな劇的なコンセプトが遂行される時間なのです。

ポスト・メルケルのドイツの政治地図はカオスと歪みと落書きの坩堝のようです。

メルケル首相が所属するキリスト教民主同盟のラシェット党首、選挙戦終盤になって支持率を伸ばしている 社会民主党のショルツ党首が後継争いをしていますが、メルケル首相の前では悲しいほどに器が小さく見えます。

目先が変わるという意味で注目を集めた緑の党のベアボック共同党首は、なんと日本にも通底する陳腐な学歴詐称問題と文章盗用疑惑などで激しいバッシングを受けて沈没しました。

どんぐりの背比べにしか見えない首班候補らが、しのぎを削っているだけの寂しい現実。それがドイツ総選挙の実態なのです。

世界にはピカロな指導者が跋扈しています。

例えば一党独裁国家、中国の習近平ラスボス主席や変形独裁国家の首魁プーチン大統領。彼らの腰巾着である世界の強権首脳たち。

はたまた反動トランプ主義者の英ジョンソン、伯ボルソナーロ、欧州最後の独裁者ベラルーシのルカシェンコ、欧州の最後から2番目の独裁者ハンガリーのオルバン首相など、など。

それらのくえない権力者に対抗できるのは、今のところ、メルケル首相だけです。

バイデン大統領でもなければマクロン大統領でもない。ジョンソン首相に至っては、トランプ前大統領の金魚のフンという実体を、ピエロの仮面で隠しているだけの危険人物だから問題外です。

そしてトランプ“事件の根源”前大統領や、今触れたジョンソン“ゴマの蠅”Brexit首謀者らを称賛するのが、ここイタリアのサルヴィーニ“極右”「同盟」党首でありメローニ“仁義なき戦い”「イタリアの同胞」党首です。

そこにはフランスの極右ルペン指導者がいてオランダの自由党がありオーストリア、ギリシャ、ドイツ、ノルウエーetcの極右「暴力信奉勢力」がずらりと並びます。

それらの反動勢力は、極東で言えば中国であり北朝鮮です。そして中国と北朝鮮にも匹敵するのが、日本国内で隠然と蠢く歴史修正主義者であり靖国信者であり東洋蔑視主義者らです。

彼らはいわゆるバナナ人種。表は黄色いのに中身が白くなって、アジアを見下し白人至上主義者のトランプやバノンを仲間と勝手に思い込む。

トランプやバノンが蔑んでいる非白人でありながら、自らが白人の域にいるつもりで白人至上主義者らに媚びを売るのです。

なんと悲しくなんと寂しく、そして何よりもなんと醜い現実でしょう。

米ケツ舐め実践者&ネトウヨヘイト系排外差別主義者らは、さっさと目覚めなければなりません。

目覚めて、われわれの父や祖父らが犯した罪を認めて腹から謝罪し、現実を見据え、歴史を真正面から見て恐れず、そのことによって日本民族の優秀性を穏便に証明するべきです。

日本を含む世界の反動勢力に静かに、だが断固として対峙できる政治家が―繰り返しになりますが―今のところアンゲラ・メルケルさんただ一人なのです。

そんな彼女が政界を引退するのは、世界の巨大な損失です。

そこで彼女をなんとしても再就職させたいと考えるのです。

転職先は、EU(欧州連合)のトップの座である欧州委員会委員長がもっとも相応しいのではないでしょうか。

EUの現在の委員長はウルズラ・フォンデアライエン氏です。

フォンデアライエン委員長は、知性的で清潔感に溢れ人柄も誠実なようですが、残念ながら政治的な重みに欠けるきらいがあります。

また世界に跋扈する悪の大物政治家らの向こうを張って、自由と民主主義と人権擁護主義を死守できるのかも、心もとない。

引退するメルケル首相が委員長の座に座れば理想的です。

フォンデアライエン氏はメルケル委員長の補佐役になるか、あるいはドイツ首相へと横滑りしてもらえば良いと思います。

メルケル首相には、なんとしてももうしばらくは世界のリーダーの位置にいてもらいたい、と願うのは筆者ひとりだけでしょうか。

 

 





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