SNSの広がりと限界

テレビをはじめとする大手メディアは資金や人的資源を豊富に持っています。彼らはそれを縦横無尽に使って一次情報を収集します。大手メディアの報道や番組は一次情報の宝庫です。

いうまでもなく一次情報は、それがありのままに正直に提示されたものなら、客観的な事実であり真実である場合がほとんどです。

片やSNSで情報を発信している個人には、自分以外には人材も金もないため、足と時間と労力を使って得る独自情報や見聞は少ない。せいぜい身の回りの出来事が精一杯です。

そこで彼らは大手メディアが発信する一次情報を基に記事を書いたり報道したりすることになります。それが2次情報です。

2次情報を見てまた誰かが記事を書く。それが3次情報・・と次々に情報が拡散されていきます。そしてその度に発信者の解釈や意見や感じ方が盛り込まれます。

その結果、ネット空間には偏向や偏見や思い込みに基づく表現もあふれることになります。

筆者はSNSでは今述べた現実をしっかり意識しながら発信しています。

つまり、自身が体験したことや自分の足で集めた情報以外は、あらゆるメディアやツテや友人知己からの一次情報を自分なりに解釈し考察して、その結果を発信するということです。

そこでは事実や事件の正確な報告よりも「自分の意見を吐露」することが優先されます。換言すれば、他から得た情報や事実や見聞に対して自らの意見を述べるつもりで記事を書くのです。

テレビ局やプロダクション、またスポンサーや出版社などから制作費をもらって番組を作り取材をする場合は、むろん自分の足で動き取材対象に向き合いインタビューをします。

そこで得るのは全て一次情報です。一次情報を制作費を出した側にそのまま渡すのが取材。加工して渡すのが番組制作であり記事執筆です。

筆者は小さな番組制作会社を率いた時期を含め一貫してフリーランスですが、大手メディアから制作費をもらって仕事をする際は、いわば彼らの一員となって仕事をこなすことになります。

SNS発信は違います。

大小の商業メディアから資金の出ない、かつ無報酬(ほとんどの場合)のSNSでは、一次情報の発信には限界があります。

無報酬のSNS記事だけを書くために、取材と称して例えば日本からガザに向かったりウクライナの前線を訪ねたりする者はいないでしょう。

SNSでは筆者は大手メディア、特にBBC、CNN、Al Jazeera、Euronews、またNHKなどを活用して一時情報を手に入れ、新聞その他の媒体でさらにそれらを確認し追加しながら「自らの意見を述べる」ことを信条にして発信しています。

一次情報取得のために大手メディアと競うのはほとんど無意味だし不可能です。それはSNSが情報発信において大手メディアに敗北したということではなく、組織と個人の情報収集法の違いに過ぎません。

SNSでの「自らの」発信と、既存メディア上で行った「自らの」発信、つまり報道取材や番組制作は全く質が異なります。そこを履き違えると滑稽な結果になりかねません。

 

 

 

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