ギリシャ・エーゲ海の島々の食日記~2019年までの番外編

クレタ島のヤギ煮込み

 

ギリシャ・エーゲ海の島々の中でも最大、且つ最南端のクレタ島は、肉料理が豊富です。島でありながら肉料理が発達したのは、アラブ人の襲撃を恐れた古代の人々が海から遠い内陸部に住まいを定めたからです。

ドデカネス諸島のうちの小さなレロス島では、豊富な魚介料理に出会いました。その中では日本の刺身に影響された「刺身マリネ」の一生懸命さが印象的でした。

島が大きいほど肉料理が発達しているように見えるのは、陸地が広い分野生の動物も多い、というのが理由なのでしょう。狩の獲物が増えればレシピも多様化します。

また家畜の場合でも、土地が潤沢なほど牧草や飼料が充溢するため飼育が盛んに行われます。そうやってまたレシピが充実する、という当たり前の状況もあるに違いない。

数年前に滞在した同じギリシャのロードス島には、肉料理と魚介料理がほぼ似通った割合で存在していました。レシピも盛りだくさんで、味もとても良かった。

ロードス島はギリシャ国内4番目の広さの島。大きくもなく小さくもない規模。あるいは大きいとも小さいとも言える島。そのせいで料理も肉と魚が満載、というところでしょうか。

10年程度をかけて中東や北アフリカを含む地中海域を旅する、という筆者の計画はイスラム過激派のテロのおかげで頓挫しました。そこに新型コロナが加わってさらに状況が悪くなりました。

筆者は命知らずの勇気ある男ではありませんので、テロや誘拐や暴力の絶えない地域を旅するのは御免です。また新型コロナ禍中での旅もぞっとしません。

それでも来年以降は、たとえコロナワクチンが開発されなくても、少しづつ旅を再開しようと思っています。ここまでの体験で、感染防止策を徹底すれば旅先でも大丈夫ではないか、と考えるようになりました。

しかし、ワクチンがない場合には、筆者の地中海紀行は来年以降も、ギリシャを中心に回る腹づもりです。アラブまた北アフリカの国々は、「将来機会がある場合のみ訪ね歩く」ときっぱり割り切っています。

その際の食の探訪のひとつは、アラブ圏で大いに楽しもうと考えていた、ヤギ&子ヤギまた羊肉料理をしっかりとメジャーに据えて、食べ歩くことです。

これまでにトルコでもギリシャのクレタ島でもドデカネス諸島でも、はたまたスペインのカナリア諸島でも、ヤギ&羊料理は目に付く限り食べ、目に付かない場合も探して食べ歩きました。

また、テロが横行していなかった頃のチュニジアでも同じ料理を求めました。そうした中での驚きは、なんと言っても昨年のクレタ島。ヤギ&羊肉料理のレシピの豊富と美味しさに魅了されました。

そこで食べられるのは家畜化された普通のヤギ&羊肉。その一方でクレタ島には、クリクリと呼ばれる原始的な野生ヤギが生息していて、島のシンボルとして大切にされています。

クリクリ種の野生ヤギは絶滅危惧種。保護されていて食べることはおろか捕獲も厳禁ですが、島人にはクリクリヤギへの特別な思い入れがあるようです。

クレタ島は四国の半分弱ほどの大きさの島。見方にもよるでしょうが決して小さくはありません。そこでの筆者のこれまでのヤギ料理食べ歩きは、島の第2の都市ハニア郊外にあるリゾートの周辺域のみです。

そこだけでも多様で目覚ましいヤギ&羊肉料理に出会いました。島全体を巡り歩けばさらに豊かなレシピに出会えるに違いありません。

世界には一生かけても訪ねきれない素敵な場所がゴマンとあります。そこも旅したいと思いますが、クレタ島のヤギ料理探訪も中々捨てがたいものがあるのです。

 

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コロナ禍中のアブナイ遊戯

 

【新聞同時投稿コラム】

 

~コロナ禍中のアブナイ遊戯~

 欧州は新型コロナの第2波に見舞われている。そんな中でも猟師はせっせと狩りに出る。欧州の多くの国の狩猟解禁時期は毎年9月。新年を跨いで2月頃まで続く。ここイタリアの狩猟シーズンも9月からの約5ヶ月間。フランスも似ている。

 一方、狩猟大国のスペインは春にも狩猟シーズンがあり1年のうち9ヶ月間は国中の山野に銃声が響く。スペインの狩猟は、長い解禁期間や獲物の種類の多さで動物愛護家などに強く批判される。だがそれはフランスやイタリアも同じ。欧米の一般的な傾向は銃を振り回して野生動物を殺す狩猟に否定的だ。狩猟が批判されるもう一つの原因は誤射が後を絶たないこと。猟師自身や一般人が撃たれる事故が多い。

 批判にもかかわらず狩猟は盛況を呈する。経済効果が高いからだ。例えばスペインの狩猟ビジネスは 12万人の雇用を生む。狩猟用品の管理やメンテナンス、貸し出し業、保険業、獲物の剝製業者、ホテル、レストラン、搬送業務など、さまざまな職が存在するのだ。

 スペインは毎年、世界第2位となる8000万人以上の外国人旅行者を受け入れる。が、新型コロナが猛威を振るう2020年は、その97%が失われる見込みだ。大打撃を受ける観光業にとっては国内の旅行者である狩猟客は頼みの綱の一つ。2020年-21年の狩猟シーズンは盛り上がる気配があるが、それは決して偶然ではないのだ。

 スペインほどではないがここイタリアの狩猟も、またフランス他の国々のそれも盛況になる可能性が高い。過酷なロックダウンで自宅待機を強いられたハンターが、自由と解放を求めて野山にどっと繰り出すと予想されているのだ。そうなれば人々は、コロナウイルスに加えて銃弾の危険にも多くさらされることになる。

 

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ロックダウン十国十色

11月7日のイタリアのコロナ新規感染者は3万9千811人。死者は425人。1日あたりの感染者数は2月-5月の第1波と第2波を通して最大。検査数の増大によって新規感染者の数も第1波より大幅に増えていますが、死者数は3月27日の最大919人よりは少ない。

だが感染拡大も死者数も、そしてICU(集中治療室)患者数も確実に増え続けています。イタリアの第2波の状況はフランス、スペイン、イギリスなどに比べるとまだ比較的平穏ですが、危機感は日ごとに強まっています。

イタリアは11月6日からコロナの感染状況によって、全国20州を危険度の高い順にレッド(赤)、オレンジ、イエロー(黄)の3カテゴリーに色分けし、それぞれに見合う準則を導入しました。最も危険度の高いレッド・ゾーンの4州では、一日を通して住民の移動が規制されるなど、第1波時とほぼ同じ厳しいロックダウン措置が実施されています。

次に危険度の高いオレンジ・ゾーンの2州と、比較的状況が穏やかなイエロー・ゾーンの14州でも、夜10時から翌朝5時まで外出が禁止され、博物館、映画館、劇場、スポーツジムやプール等は閉鎖。ショッピングモールに始まる大型商業施設も週末の営業が禁止されるなど、準ロックダウン的な規制がかけられました。

イタリアは社会経済活動の継続と感染拡大抑止との間で大きく揺れ動いています。3月-5月の過酷な全土ロックダウンによって感染拡大を押さえ込みましたが、その代償として経済に大きな打撃を受けました。政府も財界も国民の大半も、その二の舞を演じたくない点で一致しています。

同時に、第1波では一日あたりの最大感染者数が6557人(3月21日)だったのが、第2波では10月半ばに1万人を超え、11月6日には3万7千809人、翌7日は既述のようにさらに増えました。第1波時よりも検査体制が拡充したとはいえ、感染爆発が連日続いている、と言っても過言ではない状況です。

イタリアは、このまま経済活動を続けるべきという声と、全土ロックダウンに踏み切るべきという声が高まって、国論が二分されています。かつては飽くまでも全面的なロックダウン支持者だった筆者は、今では感染拡大を抑える最大の努力をしつつ経済活動も続けるべき、と考えるようになっています。

ロックダウンのイタリア経済への打撃は見るに耐えないほどに大きなものでした。それは現在も尾を引いています。それでも少しの回復軌道に乗りつつありました。ここで再びのロックダウンに踏み切れば、イタリア経済は今後何年にも渡ってさらに低迷するでしょう。それは避けるべきではないか、と思います。

欧州各国は大なり小なりイタリアと同じジレンマを抱えています。欧州大陸の52カ国の感染者の合計は11月5日現在、中南米の1140万人よりも多い1160万人。死者は29万3千人にのぼります。そんな中、どの国も感染拡大抑止と社会経済活動の両立を目指して必死に対策を講じています。

レストランやカフェなどの飲食店の閉鎖や営業規制、日常必需品店以外の小売店の閉鎖や営業短縮、また劇場や映画館や美術館などの娯楽文化施設やスポーツジムなどの閉鎖に加えて、各国が国民に課している管制をランダムに挙げれば、例えば次の如くです。

ギリシャは11月7日、ロックダウン開始。小学校と保育所以外の学校は閉鎖。許可証を持参の場合のみ外出可能。

スペインはほぼ全土で住民の移動制限。国民は居住区以外の地域への移動はできません。首都のマドリード地区は週末に他の自治体との行き来を制限。隣国のポルトガルは国土の大半で、仕事、通学、食料購入以外での外出を自粛するように要請。

フランスは10月30日からロックダウン入り。日常必需品を扱う店以外の小売店は閉鎖。外出をする際は自己申告の外出許可証の携帯が求められます。

チェコは夜9時以降の外出禁止。全ての店は午後8時閉店。また日曜日は営業禁止。ルクセンブルグ、スロバキア、スロベニア、キプロス等は夜間外出禁止。コソボは65歳以上の国民の外出を禁止。ポーランドは映画館などの娯楽施設とほとんどのショッピングセンターを閉鎖。

 オーストリアは夜8時から翌朝6時まで外出禁止。首都ウイーンの有名劇場など、娯楽施設は全て閉鎖。誕生パーティーやクリスマスのマーケットなども厳禁となりました。

スイスはジュネーブと近郊の非日常品店は閉鎖。ほとんどのバーやレストランの夜間営業は禁止。多人数での邂逅も制限されています。

ドイツは11月2日から、テイクアウトサービス以外の飲食店の営業を禁止し、娯楽施設も閉鎖。同時に観光目的でのホテル宿泊も厳禁としました。

ベルギーは10月19日から夜間外出禁止。ロックダウンが導入されて飲食店や小売店は閉鎖。国民にはテレワークが義務付けられています。しかし、昼間の外出は許されます。

EU(欧州連合)本部のあるブリュッセルを有するベルギーは、人口比率での感染者と死者が極めて多い。それでも昼間の外出を規制しないのは、EUの心臓部ゆえのジレンマのようです。

デンマークはいわゆるロックダウンの厳しい処置は取りませんが、ユトランド半島 地域での移動の自粛を住民に求めています。変異したコロナウイルスがミンクから人に移ったことを受けての処置。

ノルウエーは欧州で最もコロナ感染が抑えられている国の一つですが、国民に最大限の自宅待機と他者との接触の回避を呼びかけています。ノルウエーはロックダウンをかけずにコロナ危機を乗り切ることを目指しています。

スウェーデンは相変わらず独自のコロナ対策を推進しています。国民は他者との接触や屋内での活動を避け、できるだけ公共の乗り物を利用しないように要請されています。それには法的根拠がありますが、違反しても罰せられることはありません。また全ての国民はテレワークを推奨され、大きなパーティーや集会を控えるように呼びかけられています。

アイルランドは10月22日、第2波の欧州で一番初めにロックダウンを開始。学校は閉鎖しませんが、必要危急の用事以外での外出は禁止。

英国のイングランドは、ウエールズと北アイルランドを追いかけて11月5日からロックダウン開始。学校は閉鎖されませんが、パブなどを含む全ての飲食店が営業禁止。テイクアウトのみが許される。

など。など。。

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おっかなびっくりロックダウン

3月-4月の厳しいロックダウン効果によって、夏の間のイタリアのコロナ感染は抑えられていました。が、9月から徐々に増えて11月4日の新規感染者は30550人。死者は352人。累計の死者数は39764人となりました。

それを受けてイタリア政府は、ロックダウン導入で先行するフランス、ドイツ、イギリスなどに続いて、11月6日から少なくとも12月5日まで再び厳しい規制をかけることになりました。

ただし今回は全土一斉のロックダウンではなく、症状のある人や病院のベッドなどの割合また占有率などを勘案して、全国20州を赤、オレンジ、黄色の3段階の警戒レベルに分け、それぞれに見合った管制をします。

全国一律の規制は:

22時から翌朝5時まで外出禁止。高校はオンライン授業のみ。10月26日から閉鎖されている博物館、映画館、劇場、スポーツジムやプールなどに続いて、各種遊戯場や店も閉鎖。またショッピングモールなどの大型商業施設は週末の営業を禁止。

さらにスクールバスを除くバスなどの公共の乗り物は乗車率50%未満で運転。仕事や通院など必要危急の場合以外は、国民はできる限り公共の乗り物を利用しないよう強く要請。公務員や一般会社職員はできるだけリモートワークに徹底する。

最高警戒レベルのレッドゾーンは:

相変わらず感染者が多いロンバルディア州に加えて、ピエモンテ、ヴァレダオスタ、カラブリアの計4州。レッドゾーンでは生活必需品店以外の小売店やマーケットは全て閉鎖。住民票のある自治体から他の自治体への移動禁止。

また住民は自宅近くでの運動のみ許される。レッドゾーン内の規制は、春に実施された全国一律の外出制限とほぼ同じ厳しい措置です。ただし、第1波時のロックダウンとは違って、理容室や美容室の営業は認められます。

レッドゾーン内の中学校2年生と3年生の授業はオンラインのみで行う。小学生と中学1年生の授業は学校で行われるが、子供たちは着席中も必ずマスクを付ける。これまでは座席間の距離が保たれていれば、着席中はマスクをはずしても構わない、とされていました。

南部プーリア州とシチリア州は、レッドゾーンに次いで危険度の高い「オレンジ色」。残りの14州と北部のトレント県、及びボルザノ県は最も危険度の低い黄色に色分けされました。色分けは感染状況によって15日ごとに見直されます。

(なお、黄色は元々緑色になるはずでしたが、緑色だと「安全地帯」を連想させる恐れがあるとして、「警戒」や「慎重」の意識を喚起する黄色に変更されました)

パンデミックの当初から新型コロナに呪われているロンバルディア州は、再びロックダウンにかけられました。第1波ではロンバルディア州の12の県の中でも、特に筆者の住まうブレシャ県とベルガモ県が感染爆心地になりました。今回は州都のあるミラノ県の感染拡大が最もひどくなっています。

イタリア政府は経済破壊につながる全土のロックダウンをなんとしても避けたい考え。しかし見通しは暗い。感染拡大が止まず死亡者が急増すれば、全土一斉ロックダウンへの圧力が強まるでしょう。だがそうなってからでは、感染拡大に急ブレーキをかける、という意味では遅すぎます。

結局イタリアは、全土のロックダウンは導入せず、相当数の犠牲者を受け入れながら経済も動かす、良く言えば“中庸”のまた悪く言えば“どっちつかず”の道を探るのではないか。感染拡大や死者増も容認する、というのは恐怖のシナリオですが、第1波時の地獄を経験している分、人々は落ち着いているようにも見えないこともありません。

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サヨナラとらんぷ? 

 

トランプ候補が米大統領選で敗北後に亡命するシナリオがあります。

全国平均の世論調査では一貫してバイデン候補にリードされているトランプ候補は、激戦州に狙いを定めて活発なキャンペーンを張り、バイデン候補を追い上げているとされます。

それどころかオハイオ州などでは、逆転リードに入ったなどという報道も盛んに行き交っています。2016年の選挙と同じく、相手にリードを許しているとされるトランプ候補が当選する可能性は、依然として十分にあります。

一方、戦いに敗れて「ただのヒト」になった場合には、トランプ大統領は逮捕、起訴、刑務所入りという憂き目を見るかもしれません。それを怖れて彼はロシアに亡命するのではないか、とも噂されています。見方によってはいかにもありそうなシナリオです。

トランプ大統領は4年の在任中にさまざまな罪を犯した、と多くの批判者は考えています。例えば実の娘や娘婿を大統領補佐官や上級顧問の政府要職に登用したりした公私混同、あるいは権力の乱用。大統領の地位を使っての自らの事業への利益誘導。KKK、 プラウドボーイズ、ミリシア などの極右・狂信的集団への暴力行為の扇動など。

また大統領に就任する以前に犯した女性差別&性暴力、あるいは強姦。政治資金の流用。一貫しての巨額脱税。また国内の分断と騒乱を鼓舞し世界にヘイト、差別、暴力賛美などのトランプ主義を撒き散らした、人道に対する罪(Crime against humanity)などを指摘する者さえいます。

それらは全て疑惑の域を出ていません。疑惑は彼が大統領であることで、疑惑のままに留まって精査が避けられてきました。しかし、いったん彼が権力の座から引きずり下ろされた場合には、たちまち調査や分析や捜査が始まって、彼は窮地に陥るかもしれません。だから彼は亡命する、というのです。

筆者が知る限り「トランプ亡命」のテーマを正面きって取り上げる大手メディアはありません。だがSNSやエンターテインメント界またロシアなどのテレビでは盛んに取り上げられてきた題材です。トランプ大統領自身も演説で「もしもバイデンに負けたらアメリカを去る」と半ば冗談めかして述べたことがあります。

人は頭に浮かばない思念を口にしたりジョークにすることはありません。考えたことのみがヒトの言葉になるのです。そのことに鑑みれば彼は明らかに、少なくとも一度は「亡命」ということを考えてみたのです。考えから行動までの距離はさまざまですが、時として極端に近いこともあります。

またトランプ候補が選挙に敗北した場合には、体の芯まで憎悪と差別と不寛容に染まった彼の支持者の「トランプ主義者」らが、敗北を認めずに暴動に走る可能性がある、とも危惧されています。そうした疑惑や怖れや憂慮を紡ぎ出した、というただそれだけでもトランプ大統領は厳しく指弾されて然るべきです。なぜなら彼は超大国アメリカのれっきとした大統領だから。

トランプ亡命説よりもさらに現実味を帯びた不穏な噂もあります。すなわちトランプ陣営が、郵便投票の不正を持ち出して敗北を認めずに訴訟に持ち込み、憲法の規定を都合よく利用して選挙の勝利を宣言する、という信じがたい成り行きです。トランプ大統領が郵便投票は不正につながる危険がある、と根拠のない主張を繰り返したのは、そこへ向けての伏線だと多くの人が知っています。

トランプ大統領が再選されれば、アメリカの混迷と卑小化と醜悪化と衰退はさらに進行し、国内の分断と差別と偏向と格差が広がって、アメリカは再び立ち上がれなくなるほどの打撃をこうむるかもしれません。そうならないためにも彼が大差で負けて姑息な動きができないようになれば良い。

さらに良いのは、バイデン候補が地すべり的な勝利を収めてトランプ大統領が亡命することです。そう願うのは最早憎しみでも政治的思惑でもありません。ただひたすらに世紀のエンターテイナーとしてのドナルド・トランプさんが繰り広げるドタバタ亡命劇を見てみたい、という野次馬根性からの思いです。

 

 

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ロックダウンのジレンマ

10月28日、フランスとドイツがほぼ同時に全土のロックダウンを発表しました。

フランスは10月30日から12月1日まで国民の移動を厳しく制限します。国民は食料などの生活必需品を購入したり病気治療などの場合に限り、証明書を持参したした上で外出が許されます。それ以外は自宅待機しなければなりません。ただし、在宅勤務が不可能なケースでは出勤が認められます。レストランやカフェほかの飲食店また生活必需品を扱わない全ての店は閉鎖。一方で学校は通常通りに授業が行われます。

ドイツのロックダウンは11月2日から一ヶ月間実施。フランスよりはゆるやかな規制が課せられます。それでもレストランほかの飲食店、映画館や劇場またスポーツジムやプールなどが全て閉鎖されます。国民は不要不急の外出や旅行を自粛し、ホテルの宿泊は仕事で出張する場合に限り許されます。サッカーなどのプロスポーツは無観客でのみ開催。学校はフランス同様に閉鎖しません。また従業員50人以下の企業には、昨年11月の売上高の75%が一律に支給されます。ドイツらしく確実に実行されることでしょう。

2国の措置は爆発的に増える新型コロナの感染を抑えるためであることは言うまでもありませんが、ここからほぼ一ヶ月の辛苦を経てクリスマスが控える12月に規制を解除したい、という思いが込められています。ほとんどがキリスト教国である欧州にとっては、クリスマスは経済的にも文化的また社会的にも、さらには心理的にも極めて重大なイベントです。そこではなんとしてもロックダウンを避けたいのです。

2国の措置は同時に、3月のロックダウンよりもゆるやかです。ましてや世界一厳しかった3月-4月のイタリアのロックダウンに比べるとさらに生ぬるい。各国がロックダウンを解除した後の、6月から9月頃にかけての欧州のコロナ状況を振り返ると、イタリアの厳格なロックダウンのみが感染拡大を抑止できていたことが分かります。

従ってイタリアと比べた場合の、フランスとドイツのいわば「準ロックダウン」がどれほどの効果をもたらすかは未知数です。それでも行動を起こさなければ独仏両国の感染爆発は制御不能になる、とメルケル首相とマクロン大統領は判断しました。そのこと自体はむろん正しい見解であるように見えます。

第1波で奈落に落ち、過酷なロックダウンによって危機を脱したイタリアも、独仏英またスペインなどの後を追いかけて再び感染拡大の危険にさらされています。イタリア政府は娯楽施設の閉鎖とレストランほかの飲食店の営業を午後6時までに制限するなどの対策を取っていますが、そうした措置への抗議デモと同時にさらなる規制強化を求める声も強まっています。

どちらの主張にも理があります。働かなければ生活が成り立たないという真実と、規制をかけなければ感染拡大が止まない、という真実がぶつかりあっています。経済社会活動が完全にストップするロックダウンを避けながら感染も抑制するためには、つまり-少なくとも有効なワクチンと治療薬が開発されるまでの間は-ある程度の経済社会活動の停滞と相当数の感染および多くの犠牲者を受け入れる道しかない、ということなのかもしれません。

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イタリアの狼藉とトランプ主義

イタリア政府は10月25日、レストランや飲み屋などの営業を午後6時までに制限し、映画館や劇場またスポーツジムやプールその他の人の集まる事業所を、少なくとも11月24日まで閉鎖すると宣言しました。

これを受けて施行初日の翌10月26日、飲食店が閉まる午後6時丁度を期して、北部のミラノやトリノ、首都のローマ、また南部のナポリなどの大都市を中心に抗議デモが発生しました。そのうちの一部は暴力を伴う激しいものになりました。トリノではグッチやルイ・ヴィトンなどの有名店が破壊されました。

抗議デモはレストランや飲み屋のオーナーや従業員また彼らに同情する人々によるものでした。ところが平和的な彼らのデモはふいに暴力的になりました。警察によると破壊行為を含む暴動を主導したのは、イタリアの極右中の極右政党「新しきイタリア」のメンバーや組織犯罪集団の「カモラ」。

組織されたそれらの過激グループに、不満分子の外国人や犯罪者またアナキストなどが加わって行動が暴力化。火炎瓶が投げられ、爆竹が炸裂し、火のついた発炎筒から色つきの煙が吹き上がる騒ぎになりました。便乗した者らは前述の高級店などに押し入りました。

再び警察の発表によると、極右政党「新しきイタリア」は政府の新型コロナ対策に反対する抗議活動を以前から計画実践しており、10月24日にもローマで暴力デモを行いました。ナポリでの暴動は、同地を根城にする犯罪結社「カモラ」が扇動しましたが、そこにも「新しきイタリア」がかかわった可能性があります。

新型コロナパンデミックを軽視し、感染防止のための規制策よりも経済活動を優先させろ、と叫ぶのは米トランプ大統領でありその信奉者たちです。彼らの言動やアクションはブラジルを巻き込み欧州にも伝播しています。イギリスでもフランスでもドイツでもどこでも、コロナ感染防止策に異議を唱えるのは、主として極右のトランプ主義者らです。

極右勢力「新しきイタリア」が抗議デモを組織するのも、世界中を混濁させている米トランプ主義に煽られた結果です。犯罪組織の「カモラ」やその他の暴徒は、世界的な政治潮流の恩恵やおこぼれに与ろうと群がったに過ぎません。

突飛に見えるかもしれませんが、世界はよくも悪しくも-トランプ主義がはびこる限りひたすら悪しき局面で-しっかりと結びつき絡み合い影響しあっています。そして影響力は、超大国アメリカの権勢をバックに押し出されるトランプ主義のほうが圧倒的に強いことは言うまでもありません。アメリカの動静が世界各地に波及するのです。

その伝でいくと例えば、フランスのマクロン大統領が表現の自由を抹殺しようと試みるテロリストを糾弾するのを見て、トルコのエルドアン大統領が「マクロンは精神を患っている」と脳みそを患っている未開人が言いそうなコメントを堂々と口にするのも、世界を席巻するトランプ主義とコロナ禍が結びついた一大悪風の影響なのかもしれません。

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コロナ第2波入り口の欧州事情

イタリア政府はコロナ感染拡大第2波のうねりに対抗して、レストランや飲み屋やカフェの営業を18時までとする命令を出しました。するとこれに反対する店のオーナーや従業員や共感者が北部のミラノやトリノまた南部のナポリなどで抗議デモを行いました。このうちトリノでは一部が暴徒化して通りの店を壊すなどしました。

イタリアは第1波で惨劇に見舞われ、レストランなどの飲食業や宿泊業また観光業の全体が手酷い被害を蒙りました。ロックダウン(都市封鎖)が解除された後、それらの業界は少しの回復を見ましたが全面復興には程遠い状況です。そこに第2波とそれを受けての厳しい規制がきました。悲鳴を挙げた人々は通りに飛び出して抗議行動を起こしました。

だが彼らの異議は、日本を含む一部の外国メディアが、あたかも激しい暴力行為を孕んだ動きのようなニュアンスで伝えた内容ではありません。彼らは基本的に政府の管制を受け入れています。苦しい立場を明らかにしてできれば補償や援助を引き出したい、という胸の内が見て取れました。第1波の地獄を体験したイタリア国民は、厳しい規制だけがコロナの感染拡大の歯止めになることを知っています。

第2波の勢いがイタリアよりもはるかに深刻なフランス、スペイン、イギリスなどの欧州主要国と多くの周辺国では、ロックダウンも念頭に置いたさまざまな制限が導入され始めています。

例えば累計の感染者が120万人を超えて欧州最多となったフランスは10月22日、パリを含む9都市で実施してきた夜間外出禁止令を、38の地域と南太平洋ポリネシアのフランス領にまで対象地域を拡大しました。外出禁止措置は6週間続けられます。が、その前に全土のロックダウンが導入される可能性も高いと思います。

感染者数が欧州で初めて100万人を超えたスペインは、カナリア諸島州を除く全土を対象に緊急事態を宣言。夜間外出禁止令を発動しました。また家族の集まりは公私を問わず6人までに制限する、という家族重視のカトリック教国らしいルールも布告しました。同じカトリックの国のイタリアやフランスでも似通った束縛が課されます。また各州はそれぞれが州を跨いだ住民の移動を禁止してもよい、という権限を付与されました。

欧州で新型コロナの死者が最も多いイギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの各地域(国)が独自のコロナ対策を敷きます。加えてミニ・トランプのボリス・ジョンソン首相が独断と思い上がりが濃厚な施策を取りがちなため、混乱が著しく感染拡大を止める有効な手段がありません。

例えばイングランド北西部のリバプールなどではパブやバーが終日閉鎖されているのにレストランや商店の営業は認められていたり、南西部の ウェールズでは午後6時以降に飲食店が一斉に店を閉める「ファイヤー・ブレイカー」という規制が課せられていたりします。統一性がないことがイギリスの感染拡大を後押ししている、という見方もできそうです。

ドイツはコロナ対応でも例によって優等生振りを発揮しています。それでも1日の感染者が過去最多を更新するなど感染者が急増していて、伝統的なクリスマス市場の開催を取りやめる動きが全国で拡大しています。

そうした状況に対応するためメルケル首相は、地域限定のロックダウンを計画していると見られています。ロックダウンは全土で全面的に実施しなければあまり効果がありません。しかし日本同様にお上に従順で四角四面な国民が多い同国でなら、あるいは意外にも高い成果が期待できるかもしれません。

またギリシャは首都アテネなどに夜間外出禁止令を出し、オランダはバーやレストランを閉鎖。ベルギーの首都ブリュッセルでは、商店の営業は午後8時間までに制限され、スポーツジムやプールの営業も禁止されています。

人口1000万人に過ぎないチェコは、10万人あたりの新規感染者数が欧州で最悪。いわば日本の沖縄県状態です。厳格なマスク着用令が敷かれ、自動車内でさえマスクを付けなければならなりません。また10月22日からは店舗などが閉鎖され、移動の自由も大きく制限されて食料の買い付けや病気以外での外出は厳禁となっています。


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茶番劇の凄み~米大統領選討論会~

イタリア時間の10月23日午前3時、米大統領選におけるトランプvsバイデンの第2回で最後の討論会が始まりました。前回第一回目の討論会は、およそ討論とは呼べない両候補間の非難の応酬と、お互いが相手の話に割って入る蛮人の咆哮に終始しました。

それを受けて今回は、項目別の討論の冒頭2分間は発言する側の相手のマイクをオフにする、という異例の処置が取られました。その策はうまくいきました。両候補は冒頭の2分間ばかりではなく、全体的に抑制のきいたしかし強い姿勢で互いの主張を展開しました。

根拠のない個人攻撃はむろんありました。例によってそれはトランプ候補の側に多く見られました。これは人格の問題ですからある程度予想できました。いうまでもなくバイデン候補は聖人だったわけではなく、彼もまた醜い人格攻撃を行いました。しかし、先制攻撃をするトランプ候補への反撃、という側面が強かったことも事実です。

アメリカまた欧州の日々の報道を見ている筆者のような者にとっては、両者の政策論争には目新しい点はありませんでした。政策とはかかわりのない個人攻撃の中身も同じです。玉石混交の大手メディアやネット情報サイトが繰り返し言及し、本人たちも口にする内容があふれ出ていました。論戦のうちから敢えて例を挙げておけば次のような事案です。

新型コロナパンデミックについてトランプ候補は、ウイルスを軽視した自身の大失策を棚に上げて「ウイルスがアメリカに被害をもたらしたのは中国のせいだ。私のせいじゃない」と鉄面皮に言い放ち、パンデミックはまもなく終わる、ワクチンも数週間のうちには出来上がる、アメリカ国民は“ウイルスと共に生きる”ことを学んだ、などとも発言しました。

それに対してバイデン候補は、22万人以上のアメリカ人が新型コロナで死んだ。それはトランプ大統領の責任だ。国民をそれだけ多く死なせておいてなおかつ大統領職にとどまるのは許されない。アメリカ国民はウイルスと共に生きているのではない。アメリカ国民は“ウイルスと共に死んでいる“のだ、と厳しく批判しました。

人種差別問題では、トランプ候補は「私はこの部屋にいる誰よりも人種差別をしない人間だ」と主張。バイデン候補は「この国には構造的な人種差別がある。あなたはアメリカの現代史で最も人種差別的な大統領のひとりだ。あらゆる人種差別の炎に油を注ぎ差別を鼓舞する犬笛を吹きまくる男だ」と指弾しました。

北朝鮮についてトランプ候補は、私はキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長と仲良しだ。外国首脳と良い関係を結ぶのは重要なことだ。北朝鮮との間には戦争も起きていない、と発言。一方のバイデン候補は、あなたが仲良しの北朝鮮の指導者は悪党だ。悪党を親友と呼ぶことであなたは北朝鮮を正当化し、彼にアメリカ本土まで届く高性能のミサイルを保有させるまでになった。キム・ジョンウンとの関係が良好だと吹聴するのは、欧州侵略前のヒトラーと仲良し、と自慢するようなものだと反撃しました。

それに対してトランプ候補が、(あなたが副大統領だった)オバマ政権は北朝鮮の指導者と会うことはできなかった。私は良好な関係を築いて実現させた、と反論するとバイデン候補はすかさず、オバマ政権は北朝鮮と妥協せず厳しい条件を突きつけ続けた。だから交渉が成立しなかったのだ、と一蹴しました。

気候変動についてはトランプ候補は、パリ協定はアメリカにとって不公平であり、高い金を支払わなければならないから離脱した。何千万もの雇用や多くの企業を犠牲にするわけにはいかない、と主張。対するバイデン候補は、世界中の科学者が指摘するように時間がない。問題に対応することで雇用を生むことができる。アメリカは5万ヶ所の充電ステーションを設置することなどで、世界の電気自動車市場で優位に立つことができる、と反論しました。

またトランプ候補の脱税疑惑を取り上げてバイデン候補は、私は22年間ずっと納税記録を公表してきたが、あなたは一度も公表していない。一体なにを隠しているんだ、と追及。するとトランプ候補は、税理士が対応している。用意ができればすぐにでも公表するし、私はここまで何百万ドルも納税してきた、と反論。それにはバイデン候補が、あなたはもう何年も同じことを言っている。だが未だに納税記録を公表していない、と切り返しました。

トランプ候補は、バイデン候補がオバマ政権の副大統領だった時代、本人や家族が外国から巨額の資金提供を受けていた、と裏付けのない主張も繰り返しました。これに対してバイデン候補は、私はこれまで外国からただの一度も金をもらったことはない。人生で一度もない。私の息子や家族も一切不正はしていない、と断言しました。

ふたりの候補の主張は、前述したように欧米のメディアで取りざたされてきたものばかりです。しかし、トランプ氏とバイデン氏が顔を突き合わせて論戦を張ると、それらの中身はまた違うものにも見えていました。そこにはトランプ氏の嘘と強弁と詭弁がてんこ盛りにされていました。それでも彼が選挙で勝利する可能性が十分あることが、今のアメリカの悲劇だと筆者には見えます。だがそれは筆者が自動的に且つ進んでバイデン候補を支持することを意味しません。

ネトウヨヘイト系排外差別主義者で人種差別主義者、かつ実体は白人優位論者でもあるトランプ大統領の登場で、それらのコンセプトの対極にある哲学を理想として追求する「未来のアメリカ」への筆者の100年の恋は冷め果てました。米国民のひとりであるバイデン候補にもその責任の一端があります。それでもバイデン候補が打ち出し標榜する理念には、高齢ながらも「未来の理想のアメリカ」のかけらが内包されていると感じます。そこで筆者は2016年の米大統領選と同じく、「消去法」で、バイデン候補を応援する気分でいます。

 

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イタリアはコロナ第1波爆発時の恐怖を忘れてはならない

英仏スペインなどを筆頭に進んできた欧州の新型コロナ感染拡大の第2波が、どうやらロックダウン解除後はきわめて静かだったイタリアも飲み込みこんで、さらに勢いを増しつつあるようです。

10月初めのイタリアの一日当たりの新型コロナ感染者数は2000人台でした。それは当時は驚くほど大きな数字に見えました。ロックダウン解除後、イタリアの新規感染は低い水準で推移していたからです。

ところがその数字は感染が急増していたスペイン、フランス、イギリスなどに比べると、とても低い水準に過ぎませんでした。だがその後イタリアの感染者数は、3国をなぞるようにじわじわと増え続けました。

そして1016日、ついにイタリアの一日当たりの感染者数は1万人を超えました。翌日も増えて1925人が新たに感染しました。また累計の感染者数も節目の40万人を超えました。

一方、第2波が猛威を振るっているフランスでは、イタリアの感染者数が1万人に達する前の1015日に、一日の感染者数が3万人を超えました。それを受けてフランス政府は、首都パリを含む9都市に夜間外出禁止令を発動しました。

パリの街の灯がまた消えました。マルセイユ、リヨン、グルノーブル、 サン・テティエンヌなどの街の夜も漆黒に閉ざされます。規制期間は4週間。だが状況によっては延長されることが決まっています。

スペインとイギリスの感染拡大も続いています。1015日、イギリスの感染者は18980人を数えました。スペインの毎日の新規感染者数も極めて多い。優等生のドイツでさえ間もなく1万人に迫る勢いです。

各国は感染拡大に伴ってさまざまな規制をかけ始めています。飲食店などの営業時間が短縮されバーやパブなどでの立ち飲みも制限されます。ロンドン市内にある3600余のパブの多くは、今後の展開によっては倒産・閉鎖に追い込まれる可能性があります。

またスペインのカタルーニャ州では、バーやレストランの営業が大幅に制限されテイクアウトのみが可能となります。さらにジムや文化施設またショッピングセンターや各種店舗では、それぞれ定員の50%まで、あるいは30%まで、と収容人数が制限されます。

一方オランダでは、全てのバーやレストラン、カフェなどの店内営業が全面禁止。ただしカタルーニャ州同様にテイクアウト営業は許されます。さらに人々が各家に招待できる客の数も1日に3人までと制約されます。

国民の辛苦を尻目にオランダ王室の家族はギリシャに休暇に出向きました。当然国民から強い怒りの声が沸き起こりました。そのため無神経な王室のメンバーはあわてて休暇を切り上げる、というハプニングもありました。

その他の欧州の国々、たとえばチェコ、ベルギー、ポルトガル、またポーランドなどの感染拡大も急速に進んでいます。欧州の新型コロナ感染拡大の第2波は、もはや誰にも否定することはできません。

ここイタリアではさらに、一日の感染者数が11705人に膨れ上がった1018日以降は、各市町村長が地域の広場や道路を含む公共の場所を夜9時に閉鎖できる、とする権限が中央政府から自治体に与えられました。

同時にバーやカフェなどの営業は、午後6時以降はテーブル席のみに制限され、各席の人数は最大6人まで、とも決められました。レストランの営業もそれに準じます。また公共交通機関の混雑を避けるために、各学校に時差登校も要請しました。

イタリアでは長く厳しい全土封鎖措置を導入したことが功を奏して、夏の間は感染が押さえ込まれてきました。日毎の死者数も3月から4月のピーク時の900人超から激減しました。それでも感染拡大はじわじわと進行しつづけました。

イタリアは最近は、残念ながら第1波の過酷な犠牲によって獲得した感染抑制の「貯金」を使い果たしつつあるように見えます。しかしながら人々の中にしっかりと留まっている恐怖心が感染拡大を堰き止めるでしょう。

たとえ思い通りに感染を抑制できなくても、3月~4月の感染爆発とそれに伴う医療崩壊への怖れ、と同時に最終的にはそれを克服した自信が相まって、イタリアは危機を上手く切り抜けることでしょう。切り抜けると信じたい。

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