多様性という名のカオス

イタリアが5月4日、新型コロナウイルス感染拡大を抑え込むために導入しているロックダウンの一部を解消してからはじめての週末がきました。

イタリアでは一日当たりの新規感染者数も、累計の感染者数も共に減少し、逆にcovid-19からの回復者の数は増え続けています。

また死者数も減少しています。それでも5月4日以降、昨日までの一日当たりの死亡者数は:
4日195人 5日236人 6日369人 7日274人 8日243人、と依然として多い。総計も30201人となりました。

死者数がすでにイタリアを上回り、感染者数の合計が明日にもイタリアを超えそうなイギリス、またそのどちらの数字も世界最悪のアメリカに比べれば増しかもしれません。が、例えば日本に比較すれば、イタリアは相変わらず地獄の様相を呈しています。

しかしあらゆる数字が状況の改善を示唆してはいます。1人の感染者がウイルスを何人にうつすかを示す基本再生産数 も1を下回っています。イタリアの死者数が多いのはこれまでに感染し重症化した人が亡くなり続けているからです。

それらの事情を踏まえてイタリア政府は5月4日、ほぼ2ヶ月に渡った過酷なロックダウンを「一部解除」しました。ところが多くの地域で人々があたかも「全面解除」のような動きに出て問題になっています。

イタリアの感染爆心地、北部ロンバルディア州ミラノで5月7日、若者を中心とする人々がおしゃれなナヴィリオ地区にどっと繰り出しました。彼らはマスク着用や対人距離の確保の義務などを無視して思い思いに集いました。

感染予防を全く気にしないそれらの人々への非難が殺到し、ミラノ市長は「恥知らずな行為」とまで罵倒して、再び同じことが起こるなら即座にナヴィリオ地区を封鎖する、と宣言しました。

ところが同様な光景はイタリア中に展開されて、感染拡大への懸念が募っています。特に感染者の少ない南部の主要都市で、ミラノにも勝る人数の人々が密集しマスクも外して談笑する様子が多く見られました。

この週末に感染拡大があってもそれはすぐには表面化しません。結果が明らかになるのは来週以降です。そこでCovid19関連の数字が悪化すれば、政府や地方自治体は規制を強化する可能性が高い。

しかし数字に変化が見られなければ、当局が厳しい動きに出るのは困難になり、人々の開放感はますます募って感染予防策がおろそかになることでしょう。

イタリアのコロナ禍は世界のそれと同じように全く終わってなどいません。行過ぎた規制緩和や人々の安易な行動は、将来大きな災いを呼び込む危険性が高い。

多様性を重視するイタリア社会は平時においては極めて美しく頼もしくさえありますが、人々の心がひとつにならなければならない非常時には、大きな弱点になる可能性もあります。

今この時がまさにそうです。


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official siteなかそね則のイタリア通信

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