ロシア包囲網に於けるイタリアの立ち位置

新聞、テレビ、ネットをはじめとするとするありとあらゆるメディアが、昼も夜もそして真夜中でさえも、ウクライナにおけるプーチン・ロシアの蛮行をこれでもかとばかりに伝え続けています。

戦争は世界中で一日の休みもなく行われています。だが情報開示が当たり前に展開されている欧州で、実戦が進行するのはきわめて異例のことです。

欧州は紛争や対立を軍事力で解決するのが当たり前だった野蛮且つ長い血みどろの歴史を経て、それを話し合いと外交で解決しようとする進歩的且つ教化された民主主義の道を確立しました.

片やロシアは、未だそこに至らない未開国であることが明らかになりました

情報を隠し、歪め、虚偽を垂れ流すプーチン・ロシアは欧州の一部ではありません。それはアジアです。

ここで言うアジアとは、民主主義を理解しない中国的、アラブ的、日本右翼的勢力の全てです。つまり未開で野蛮で凶悪なアジア的精神。

敢えて日本のみに目を向ければ、残虐でどう猛で卑怯な戦闘集団だった旧日本軍と軍国主義日本の過去を直視しようとせずに、むしろそれを隠蔽し否定し都合のよい情報のみを言い立てて、歴史を修正しようとするネトウヨ系排外差別主義勢力のことです。

自由と民主主義を謳歌する西側世界は、アジアに属するロシアとは全く逆の社会状況にあります。そこでは横暴と悪意と欺瞞に支配されたプーチン・ロシアの情報操作の実態が、あらゆる角度から暴かれています。

欧州の全ての国は、ウクライナ危機が自国にとって対岸の火事ではないことを実感しています。ウクライナが陸続きで地理的に近く、且つ欧州の過去の血みどろの大戦や闘争の記憶が全ての人々に共有されているからです。

そして何よりもロシアのプーチン大統領が、民主主義の精神とはかけ離れた独善と悪意と憎悪にまみれた異様な指導者であることが再確認されたからです。

ロシア包囲網に断固とした意志で参加しているイタリアは、歴史的にロシアと親和的な関係を築いてきました。イタリアが長く欧州最大の共産党を有してきたからです。同じ動機でイタリアは中国とも親しい

それはだが近代史における政治ゲームに過ぎません。統一国家であるイタリア共和国の真髄には、独立心旺盛で自由な都市国家群がいきいきと息づいています。イタリア共和国の核心は政治ゲームの主体ではなく、それらの都市国家がもたらす多様性なのです。

国家構成の基盤に多様性が居座っているイタリアは、対外的にも多様で実践的な政治体制を維持しています。敢えてひとことで分かり易くいえば、イタリアは世界中のあらゆる国と親和的なのです。少なくともその意志を秘めて世界に対しているのがイタリア共和国です。

それは八方美人とか日和見主義を意味するのではありません。自立志向の強い都市国家群を統一国家内に含む場合の必然の帰結です。言葉を変えれば中央政府は、国内にある多種多様な意見や意思を絶えず尊重し耳を傾け続けなければなりません。

そのスタンスは対外的にも増幅されてイタリア共和国の立ち位置を規定していきます。つまりそこでも多様性を重視する姿勢になります。イタリアは歴史的にもまた思想的にも、誰とでも共存しなければならない性根を持っています。あるいは誰とでも親和的でなければならない性根に縛られています。

イタリアとロシアは、地理的には遠い立場ながらも歴史的に良好な関係を保ってきました。専門家の中にはその状況を指して「イタリアは欧州におけるロシアのもっとも親しい国である」と断定する者さえいます。

イタリアはプーチン大統領自身とも友好的な関係にあります。その善し悪しまた好悪は別にして、現代イタリア最大の政治的存在であるベルルスコーニ元首相は、プーチン大統領とは親友同士とさえ呼べる仲です。

86歳の元首相は2022年3月19日、性懲りもなく53歳年下の女性と3回目の結婚式を挙げました。彼の友人のプーチン大統領は、もしもウクライナへの暴力行使で忙しくしていなければ、おそらく結婚式に出席していたことでしょう。

また極右政党「同盟」と「イタリアの同胞」のサルヴィーニ、メローニの両党首は、相変わらずプーチン大統領を賞賛して止みません。イタリア中がプーチン大統領の残虐な戦争に怒りをあらわにしているため、彼らも戦争反対と口では言っています。だが本心は相変わらずプーチン万歳というところでしょう。

ポピュリストの彼らは時勢が右といえばそれに追随し、左といえばそれに媚びます。節操もなく信義もなく核もない。あるのは粗暴で抑圧的な感情と怒りです。

そして極右の2政党とベルルスコーニ党が手を組んで選挙に臨めば、イタリアは世論調査の数字上は、明日にでも彼らに統治されることがほぼ確実な情勢です。

だがそれらプーチン愛好家の人々の願いも空しく、イタリア政府は今のところはNATOまたEUとぴたりと歩調を合わせてロシアに歯向かっています。そしてロシアは、イタリアを敵性国家と規定しエネルギー供給を止める、などと脅してさえいます。

イタリアはエネルギー源であるガスの90%を国外から輸入していて、総輸入量の45%がロシア産です。イタリアはEU加盟国の中では、ガスの5割以上をロシアから購入しているドイツに次いでロシアへの依存度が高いのです。

2014年~15年のクリミア危機では、イタリアの当時のレンツィ政権は、ロシアと関係が深い国内のエネルギー業界の抵抗に遭って、ロシアに対して強硬措置を取ることができませんでした。ドイツもほぼ同じ状況でした。

だが両国は、今回のロシアの蛮行に際しては、揃って立ち上がって他の国々と歩調をあわせロシアに対峙しています。

イタリアが速やかに行動できたのは、ドラギ政権の力によるところが大きい。

2021年に政権を握ったマリオ・ドラギ首相は、ほぼ全ての政党が一致団結して政権を支持している事実と、首相自身の求心力の強さを背景にEUにぴたりと寄り添い、対ロシアへの強硬路線を取っています。

イタリアはロシアがウクライナに侵攻して間もなく、1億1千万ユーロをウクライナ政府に提供すると表明しました。またNATOには、今後2年間であらたに1億7千400万ユーロの貢献をすることも決めました。同時にウクライナ難民には、難民申請を出さなくてもイタリア滞在が可能になる措置を取っています。

さらにイタリアは、ひとまず合計約5000人の兵士をウクライナ周辺国へ送る決定も下しました。ハンガリーとルーマニアにはそのうちの3500人が派遣されます。ルーマニアでは同国の空軍をイタリア空軍が指導しサポートします。

加えてイタリアは、ウクライナ危機を国家非常事態宣言下に置くことも決定しました。それによって政府はコロナ禍中と同様に、緊急の規制や法律を国会の承認を得ることなく施行することが可能になります。

イタリアを含む欧州は、静かにだが断固とした意志で、プーチン独裁政権に対抗して臨戦態勢に入っていると形容しても過言ではありません。

 

 

 

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