自主規制

2020年3月5日AM7時現在、イタリアの新コロナウイルス感染者は3089人。COVID-19による死亡者は107人に上昇。 これは過去24時間で28人が新たに死亡し587人の新規感染が確認されたことを意味します。感染者は毎日およそ500人単位で増え続け、死亡者の数も多くなっています。

筆者はこのブログを含むSNS上で、イタリアのCOVID-19関連情報を発信してきました。その際、新型コロナウイルスに対する不安を象徴的に表すような絵を敢えて使ってきました。それはウイルス禍が速やかに消え去ることを信じつつ、恐怖に押し潰されないように殊更にそれを笑い飛ばす、という意味合いを込めての投稿でした。

しかしながら日伊を含む多くの国々での感染拡大は止まず、むしろ加速する状況です。残念ながら犠牲者も増え続けています。そうした中では筆者の記事の絵の意図が伝わり難くなっていると感じます。それどころか、見方によってはあるいはそれを不謹慎と感じる方もいるかも知れません。

そこで、将来COVID-19が克服されて世の中が明るく平穏になるまで、行過ぎて不安を煽るように見えるかもしれない絵をいったん削除し、別の絵に置き換えることにしました。ご了解を願います。

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止まらないイタリアの武漢化

2020年3月1日AM8時現在のイタリアの新型ウイルス感染者は1128人。このうち死者は29人。多くは基礎疾患のある高齢者です。また治癒した者は50人。なお感染者1128人にはこれらの治癒者も含まれます。

治癒した人々を除いてもイタリアの感染者数は千人を越えました。相変わらず中国、韓国に次いで世界3番目の感染者数です。

また、数字は週末初めのデータなので、日曜日の今日の実際の感染者数はさらに増えていると考えられます。それは月曜日に明らかになるでしょう。

ちなみに今この時の世界中の全ての感染者数は86983人。このうち中国本土の感染者数は79824人、韓国が3526人、日本はクルーズ船関連を除いて241人です。

イタリアの新型コロナウイルス感染者数は、2月21日から22日にかけて、それまでのわずか3人から229人へと爆増しました。北部ロンバルディア州の小さな町で集団感染らしいケースが発生したのです。

イタリア政府は即座に町とその周辺自治体を封鎖しました。警察と軍隊が出動してのシビアな動きです。非常事態を通り越して戒厳令の様相さえ呈していました。

またイタリア政府はそれ以前の先月末、中国での新型ウイルス感染爆発が明らかになるや否や、世界でいの一番に中国便を全面禁止にしました。その動きは中国を激怒させると同時に世界を驚かせました。

その素早い決断は、主としてパンデミックへの恐怖からなされたものでした。イタリアの果敢な措置は、ウイルスをシャットアウトするのに有効と見えました。ところがそのときには既に遅く、イタリアには中国発の新型ウイルスが多く侵入していた、という状況であったようです。

それがロンアバルディア州での感染爆発になりました。そればかりではありません。厳しい封鎖措置で同地域からの感染拡大は阻止されているはずなのに、感染は場所を選ばずに広がっています。そのことがウイルスの以前からの深い侵入また浸透を表しているように見えます。

なぜ欧州の多くの国の中でイタリアがあっけなくcovid-19の巣窟になってしまったかを考えると、筆者はどうしてもイタリア政府の失策を指摘せざるを得ません。

イタリア政府は2019年3月、低迷する経済へのテコ入れを主な理由に中国の「一帯一路」への支持を表明。そこからさらに一歩踏み込んで、G7国として初めて中国政府と連携する旨の覚書を交わしました。

「一帯一路」構想に対するEUやアメリカなどの警戒感に不安を抱いていた習近平政権は欣喜雀躍。イタリアとの友好を急速に且つ強力に推し進めました。結果、中伊の関係は深まりヒトとモノの往来が急増しました。

イタリアは欧州の他の観光大国をあっさり追い抜いて、中国でもっとも人気の高いヨーロッパの訪問先となり、中国人観光客も急激に増えました。その結果イタリアは、フランス、スペイン、イギリスなどの観光人気国を尻目に、Covid-19にも深く愛される国になってしまった。。

今のところ筆者のこだわるところを指摘する論者はイタリアにはいません。あえて言えば、ミラノの生体医療専門家が、新型コロナウイルスは遅くとも1月半ば頃にはタリアに侵入していた可能性が高い、と主張していることぐらいです。

さらにそのことに関連して、新型コロナウイルスは中国では昨年の12月ではなく、夏の終わりから秋口にはすでに蔓延していたかもしれない、と言い出す医療専門家もいます。たとえそうだとしても、恐らく中国は永久にそれを認めることはないでしょうが。。

だがイタリアに新型コロナウイルスが早い時期から侵入していたかどうかについては、今後調査研究が深まる過程で明らかにされる可能性があります。いうまでもなく今重要なことは、感染拡大の終息であって、ウイルスの襲来時間の解明ではありませんが。

イタリアにウイルス感染が拡大した不幸は、あるいは単純にイタリアが安全対策を怠ったことが理由なのかもしれません。あっと驚くような優れた部分と、間の抜けただらしない面を併せ持つのが、イタリアという不思議の国です。

世界で初めて中国便をシャットアウトするような危機管理能力の高さを示す一方で、破れた網で新型コロナウイルスを一網打尽にしようとでもするような、杜撰な防御策があるいは実行されたのかもしれません。その答えは遠くない未来に必ず明らかになることでしょう。


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0号患者違い

イタリア北部の11の自治体が封鎖される原因となった集団感染の0号患者について誤報がありましたので訂正します。

2月22日のエントリー(掲載は27日)記事「イタリアの落とし穴」で

“~北部ロンバルディア州の街で集団感染にも近いケースが発覚しました。38歳のイタリア人男性が新型コロナウイルスに感染し男性の妊娠中の妻も感染。また男性が所属しているスポーツクラブのメンバーや医療関係者などにも感染していることが次々に明らかになっています”

と書きました。

そこで言及した38歳のイタリア人男性とは、いわゆる0号患者(インデックス・ケースindex case)のことでした。だが正確には彼は、集団内の最初の患者である0号患者ではなく、第1号患者です。

38歳の男性は中国に行ったことはなく、彼が発病前に会っていた友人の男が上海を訪ねていました。するとその友人の男が最初の患者、つまり0号患者と見られたのですが、ウイルス検査は陰性と判明。そのため38歳の男性がどこでどのように感染したのか分からないまま、感染拡大が続いている、というのが今現在の状況です。

当初の情報では、38歳の男性は武漢を旅した、となっていましがそれは友人が訪ねた上海の間違いだったようです。ふいに感染者が続出した混乱の中で、世界恐慌の震源地である武漢の名がごく自然に独り歩きをした、ということなのでしょう。

なお、0号患者である可能性がある上海帰りの友人が、陰性と判断された後も繰り返し検査を受けたがどうかは不明です。ウイルス検査には間違いが多いという情報があります。日本のクルーズ船の乗客の検査でも、最初の検査は陰性で2回目に陽性と出たケースがあったと記憶します。

イタリアの医療のレベルは高く、十分に信頼に値します。またペストなどの伝染病と戦ってきた歴史もあり、他の欧州の先進国と同様に疫病の調査、予防、治療にも熟達しています。従って0号患者かもしれない上海帰りの友人の扱いに抜かりはなかったとは思います。が、少し気にならないでもありません。


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ザ失われた環~ミッシングリンク

当サイト「ピアッツァの声」の

https://cannapensante.com/

ベニスカーニバルもサンレモ音楽祭も取り憑き殺す激爆ウイルス

から

コロナウイルスよりも毒性の強い魔物

までの

間の記事4本が下書きのまま投稿されずに残っていました。そこで本日(2月28日)一斉に公開しました。記事は時系列に:

1「イタリアの落とし穴

2「バタフライ・エフェクト

3「戒厳令も敷けるのが真の民主主義かも

4「パニクらないパニック

です。

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パニクらないパニック

2020年2月25日(伊時間)現在、イタリアの新型コロナウイルス感染者数は231。死者7人。全員が高齢者で基礎疾患がありました。今のところ感染は北部イタリアに集中しています。大部分がミラノが州都のロンバルディア州と、ベニスが州都のヴェネト州。

ロンバルディア州の10の自治体とヴェネト州の一つの自治体は封鎖されています。封鎖とはそれらの自治体の出入り口に重武装の警察の検問が設けられて、ヒトとモノの動きを規制すること。軍隊もスタンバイしています。要するに地域限定の戒厳令、と考えれば分かりやすと思います。

封鎖地域内では学校や図書館を含む全ての公共施設が閉鎖され、レストランやバールなどの歓楽施設も閉まります。開いているのは食料品店や薬店などの生活必需品を扱う店のみ。薬店などは逆に強制開店させられている場合がほとんどです。

その状況はメディアによって逐一報道されます。そのために封鎖地域に近い市町村でも静かに恐慌が起きます。筆者の住まうあたりも「感染爆心地」から遠くないため、パニックになっていると言うのはまだ当たりませんが、完全に穏やかでもありません。

その証拠は友人知己との話の中などに出てくる恐怖感の表出の多さ。またスーパーマーケットなどの状況などにあります。

昨日、食料の買出しに出ました。いつものようにわざと昼食時を選びました。買い物客がぐんと少なくなるからです。店の様子は普段と何も変わりませんでした。ところが精肉売り場に異変が起きていました。

製品棚が空っぽなのです。店員に聞くと、午前中に大勢の客が押し寄せて売り切れになった、と話してくれました。

3軒のスーパーを巡って興味深いことを発見しました。3軒のうち2軒は安売り店なのですが、その2軒の品薄が激しかったのです。

残る1軒は普通の値段(安売りを“売り”にしていないという意味で)の店で、そこも普段に比べてやや品薄の印象はありましたが、棚が空っぽという売り場はありませんでした。

それはもしかすると、貧しい人ほど不安におちいりやすい、ということの証かもしれない、とふと思いました。ネガティブな世情の犠牲になりやすいのはいつも弱者です。だから急ぎ防御の動きに出た、ということなのかもしれません。

筆者は金持ちではありませんが、ひどく貧しいというわけでもありません。普段安売りスーパーに足を運ぶのは、もちろん値段の魅力もありますが、自分が基本的に好奇心の強い人間だからです。

筆者はTVドキュメンタリーの制作やリサーチ、またプライベートの旅などでよくイタリア中を巡り歩きますが、どこに行っても真っ先に市場に足を運びます。市場を覗くのが好きなのです。そこには地域の人々の暮らしの息吹が満ちあふれています。それを感じるのが好きなのです。

スーパーマーケットを巡り歩くのも基本的には同じ動機からです。日常生活の場での行動ですから旅行中の気持ちと純粋に同じではありませんが、筆者を突き動かしているのはいつも人々の暮らしへの関心であり好奇心です。

さて、

「感染爆心地」の近くに住んでいると言いながら、のんびりと状況を読んだり自己分析などをしているのは、事態が切迫していないことの証です。できればこの心のゆとりを保ったまま感染終息の声を聞きたい、と切に願っていますが。。

※オリジナル記事2月24日 なかそね則のイタリア通信 より加筆転載

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戒厳令も敷けるのが真の民主主義かも



2020年2月23日19:00現在、イタリアの「COVID-19」患者数 は152に増加。北部のロンバルディア、ヴェネト、ピエモンテ、エミリア・ロマーニャ州と、中部のラッツィオの5州が感染地域です。

このうち最も感染者が多いのはミラノが州都のロンバルディア州。

ロンバルディア州とヴェネト州、ピエモンテ州の3州は、保育園から大学までの全ての学校を閉鎖し、公私に渡る集会や催し物、プロサッカーを筆頭にするあらゆるスポーツイベント、各種コンテストや祭り等々を当面の間は禁止するとしました。

ミラノのスカラ座を始めとする劇場や映画館、各種娯楽・歓楽施設も閉鎖します。また2月25日まで続くはずだったベニスカーニバルも即座に打ち切りとなりました。

またカフェやバールやパブやワインバーなどの営業は午後6時までに。ただしレストランは今のところは規制しません。だが状況によっては、明日にでも全ての店の閉鎖命令が出るものと考えられます。

厳しいように見えるそれらの措置は、過去にペスト流行の悪夢などを経験しているイタリアの基準では実はゆるい類の規制です。

今回、突然ウイルス流行の爆心地となったロンバルディア州の10の自治体と、欧州初の死亡者が出たヴェネト州の1つの自治体は、人の出入りを含む一切の活動が禁止・封鎖されました。

合計人口が5万人になるそれら11の自治体は、24時間態勢で警察の監視を受け軍隊もスタンバイします。つまりそこは、ほぼ戒厳令下に置かれることになったのです。

ほぼ戒厳令下に置かれているのは、筆者の住まいから遠くない地域です。筆者はロンバルディア州の住人なのです。

そればかりではありません。もうひとつの戒厳令発動地であるヴェネト州も、ロンバルディア州の隣接地です。ウイルス話や封鎖は他人事ではないのです。

さて、ここからはウイルスパニックにまつわるこぼれ話を記します。

事態が悪化すれば、筆者の住む村のあたりもたちまち“ほぼ”戒厳令下の状況に置かれる可能性が出てきました。そこで念のために明日にでも食料の買出しに出よう、と先刻妻と話し合いました。

ミラノから近く、筆者も息抜きのためにひんぱんに訪ねるスイスは、イタリア人通勤者を締め出さない、と表明しました。

スイスにはまだコロナウイルス感染者は出ていません。ところがイタリアのウイルス感染爆心地のロンバルディア州からは、多くのイタリア人が国境を越えてスイスに仕事に向かいます。

だからスイス政府は、イタリアの不安をやわらげようとして、わざわざそうコメントを出したのです。

一方、南部イタリアのナポリ湾に浮かぶ有名リゾート地のイスキア島は、北部のロンバルディア州人とヴェネト州人、また中国人の入島を拒否する、とわざわざ宣言しました。

ナポリもイスキア島も大好きな、且つロンバルディア州住民で中国人にも親近感を持つアジア人の筆者は、イスキア島の怖い主張に心が萎えました。

外国のスイスとはずいぶん違う対応だと少し悲しくもなりました。

新型コロナウイルス「COVID-19」」は厄介です。実にうっとうしく恐怖でもあります。だがもうひとつの真実も決して忘れてはなりません。

つまり「COVID-19」」は、今この時も世界中で蔓延しているインフルエンザに比べた場合、より小さな脅威です。インフルエンザの方がはるかに巨大な殺人疾患なのです。

それでも「COVID-19」が大問題であるのは、治療法が分からずワクチンもないからです。またその状況でウイルスが突然変異して、人類の制御力の及ばない死のパワーを獲得する可能性があるからです。

要するにわれわれは、ウイルスの正体が分からないからそれを恐れるのであり、また恐れなければなりません。それは真っ当な態度です。

だがイスキア島の態度は真っ当ではない。なぜなら島は、正体が分からないウイルスと正体が明らかな北部イタリア人と中国人を、敢えて一緒くたにして全て「分からないもの」と見なしているからです。

分からないもの」ですから、島は北部イタリア人と中国人を差別するのです。それは間違っています。

だが残念ながら、ウイルス・パニックは今後、世界中でイスキア島の誤謬と同じ現象や動きやトレンドをひんぱんに引き起こす可能性が高い。

その意味では「COVID-19」の真の恐怖は死の恐怖ではなく、それの蔓延によって人々の差別意識があらわになる現実であるのかもしれません。


※オリジナル記事2月24日 なかそね則のイタリア通信 より加筆転載

 

 

 

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バタフライ・エフェクト

「COVID-19」にまつわるイタリアの状況はめまぐるしく変化しています。言葉を替えれば、ウイルスの感染が急速に拡大しているのです。

イタリア時間の今朝早く筆者は、北部イタリアでふいに「COVID-19」患者が続出し、初の死者が出たと発信しました。それからほぼ9時間後の今、2人目の犠牲者が出たことを報告しなければなりません。

初めの死亡者は78歳の男性。今回の犠牲者は75歳の女性です。男性は感染経路が判然としない町の住人。女性は、38歳の男性を起点に広がっているミラノ近郊の感染被害者グループの一人です。

ちなみに亡くなった2人は、イタリアのみならず欧州初のヨーロッパ人の死者です。ヨーロッパで初めての「COVID-19」犠牲者は、先週フランスで死亡した80歳の中国人男性です。人種差別意識からではなく、多くの欧州の患者が中国人である(あった)事実を伝えるために、敢えて記しておきたいと思います。

ついでに言えば、2月21日以前の全てのイタリアの感染者はわずか3人。2人がイタリア旅行中の中国人。1人は武漢から帰国したイタリア人でした。

ところが、今日ここまでに感染者は40人近くにまで激増し、その全員がイタリア人です。感染は中国人の枠を超えて、明確に欧州地元の住人の間に広がっています。少なくとも2020年2月22日夕方現在のイタリアではそうです。

筆者は今、住まいからそう遠くない地域で感染が拡大している現実にこれまでにない危機感を覚えると同時に、イタリア政府が昨年、中国と「一帯一路」連携への覚書を交わした因果を深い感慨と共に繰り返し思ってます。

イタリア政府は低迷する経済へのテコ入れを主な理由に、反対するEUを押し切り国益を優先しつつ、独立独歩の精神にも恥じないやり方で中国と覚書を交わしました。結果、中国との関係が深まりヒトとモノの往来が急増しました。

それが今このときのイタリアの不幸を呼んでいるのではないか、としきりに思っています。

イタリアは中国で新型コロナウイルスの感染拡大が明らかになるや否や、中国政府の猛反発を意に介することなく台湾、香港、マカオを含む中国便を、世界で真っ先に全面禁止措置にしました。

その果断なアクションは恐らく間違っていません。

だが、そのときはすでに遅く、中国発の新型ウイルスは、イタリア-中国間の大量のモノとヒトの交流にまぎれてこの国に達してしまっていた。。。

いささか感傷的ながら、筆者はどうしてもそんな物思いから抜け出せずにいます。

※オリジナル記事2月24日 なかそね則のイタリア通信 より加筆転載

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イタリアの落とし穴

イタリア北部でふいに「COVID-19」が出現しました。ゾンビのように、という形容がそらぞらしいほどの唐突な印象。あるいは報道管制でも敷いていたのだろうか、と疑いたくなるほどです。突然に市中感染らしいケースも明らかになり、感染は急速に拡大しそうな様相を呈しています。

これまでのイタリアの「COVID-19」患者は3人でした。2人はイタリア旅行中の中国人夫婦。1人は武漢から専用機でイタリアに帰国した、56人のイタリア人のうちの1人で若いイタリア人男性です。中国人夫婦は回復し、イタリア人男性も状態は安定。ほぼ回復していました。

ところが事態は急展開。北部ロンバルディア州の街で集団感染にも近いケースが発覚しました。38歳のイタリア人男性が新型コロナウイルスに感染し男性の妊娠中の妻も感染。また男性が所属しているスポーツクラブのメンバーや医療関係者などにも感染していることが次々に明らかになっています。

同時にベニスが州都のヴェネト州でも2人の患者が出て、そのうちの78歳の男性が死亡。イタリア初の「COVID-19」犠牲者。こちらの2ケースは今のところ感染経路が不明です。

世界で初めて中国便をシャットアウトして、危機管理能力の高さを示したように見えたイタリアには、それ以前に既に新型コロナウイルスが侵入していた、ということのようです。

その見方が正しいなら、イタリアは中国の「一帯一路」構想を支持し、同国と覚書まで交わした政治のツケを払い始めた、とも言えるかもしれません。それというのも覚書以来イタリアには、中国人観光客が大量に押し寄せ、ビジネス関連の交流も活発になって人の行き来が急激に増えていたからです。

イタリアは突然、欧州で最も「COVID-19」患者の多い国になりました。劇的な展開に衝撃を受けているのは筆者だけではないでしょう。しばらくはこの驚異的な現象に目をこらしていこうと思います。それが「しばらくの間」の作業であることを祈りつつ。。。

※オリジナル記事2月22日 なかそね則のイタリア通信 より加筆転載

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コロナウイルスよりも毒性の強い魔物

2020年2月23日19:00現在、イタリアの「COVID-19」患者数 は152に増加。北部のロンバルディア、ヴェネト、ピエモンテ、エミリア・ロマーニャ州と、中部のラッツィオの5州が感染地域です。

このうち最も感染者が多いのはミラノが州都のロンバルディア州。

ロンバルディア州とヴェネト州およびピエモンテ州の3州は、保育園から大学までの全ての学校を閉鎖し、公私に渡る集会や催し物、プロサッカーを筆頭にするあらゆるスポーツイベント、各種コンテストや祭り等々を当面の間は禁止するとしました。

ミラノのスカラ座を始めとする劇場や映画館、各種娯楽・歓楽施設も閉鎖されます。また2月25日まで続く予定だったベニスカーニバルも即座に打ち切りとなりました。

またカフェやバールやパブやワインバーなどの営業は午後6時までに。ただしレストランは今のところは規制せず食料品店も同じ。だが状況によっては、明日にでも全ての店の閉鎖命令が出ることでしょう。

厳しいように見えるそれらの措置は、過去にペスト流行の悪夢などを経験しているイタリアの基準では実はゆるい類の規制です。

今回、突然ウイルス流行の爆心地となったロンバルディア州の10の自治体と、欧州初の死亡者が出たヴェネト州の1つの自治体は、人の出入りを含む一切の活動が禁止・封鎖されました。

合計人口が5万人になるそれら11の自治体は、24時間態勢で警察の監視を受け軍隊もスタンバイします。つまりそこは、ほぼ戒厳令下に置かれることになったのです。

ほぼ戒厳令下に置かれているのは、筆者の住まいから遠くない地域です。筆者はロンバルディア州の住人なのです。

そればかりではありません。もうひとつの戒厳令発動地であるヴェネト州も、ロンバルディア州の隣接地です。ウイルス話は他人事ではないのです。

さて、ここからはウイルスパニックにまつわるこぼれ話です。

事態が悪化すれば、筆者の住む村のあたりもたちまち“ほぼ”戒厳令下の状況に置かれる可能性が出てきました。そこで念のために明日にでも食料の買出しに出よう、と先刻妻と話し合いました。

ミラノから近く、筆者も息抜きのためにひんぱんに訪ねるスイスは、イタリア人通勤者を締め出さない、と表明しました。

スイスにはまだコロナウイルス感染者は出ていません。ところがイタリアのウイルス感染「爆心地」のロンバルディア州からは、多くのイタリア人が国境を越えてスイスに仕事に向かいます。

だからスイス政府は、イタリアの不安をやわらげようとして、わざわざそうコメントを出したのです。

一方、南部イタリアのナポリ湾に浮かぶ有名リゾート地・イスキア島は、北部のロンバルディア州人とヴェネト州人、また中国人の入島を全面拒否する、とわざわざ宣言しました。

ナポリもイスキア島も大好きな、且つロンバルディア州住民で中国人にも親近感を持つアジア人の筆者は、イスキア島の怖い主張に心が萎えました。

スイスとはずいぶん違うなぁ、と少し悲しくもなりました。

「COVID-19」の 新型コロナウイルスは厄介です。実にうっとうしく恐怖です。しかしもうひとつの真実も決して忘れてはなりません。

「COVID-19」」は、今この時も世界中で蔓延しているインフルエンザに比べたなら、より小さな脅威です。インフルエンザの方がはるかに巨大な殺人疾患です。

それでも「COVID-19」が大問題であるのは、治療法が分からずワクチンもないからです。またその状況でウイルスが突然変異して、人類の制御力の及ばない死のパワーを獲得する可能性があるからです。

要するにわれわれは、ウイルスの正体が分からないからそれを恐れるのであり、また恐れなければなりません。それは真っ当な態度です。

だがイスキア島の態度は真っ当ではありません。なぜなら島は、正体が分からないウイルスと正体が明らかな北部イタリア人と中国人を、敢えて一緒くたにして全て「分からないもの」と見なしているからです。

分からないものだから、島は北部イタリア人と中国人を差別するのです。それは間違っています。

だが残念ながら、ウイルス・パニックは今後、世界中でイスキア島の誤謬と同じ現象や動きやトレンドをひんぱんに引き起こす可能性が高い。

その意味では「COVID-19」の真の恐怖は、死の恐怖などではなく、それの蔓延によって人々の差別意識があらわになる現実かもしれません。

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ベニスカーニバルもサンレモ音楽祭も取り憑き殺す激爆ウイルス

2月のイタリアは例年、カーニバルとサンレモ音楽祭で活気づきます。カーニバルはイタリア全国で催される祭り。特にベニスのそれが有名です。また70年の歴史を持つサンレモ音楽祭は、5夜にわたって繰りひろげられるいわばイタリアの「紅白歌合戦」。

2月8日に幕を閉じたサンレモ音楽祭は、視聴率や広告収入が大幅にアップするなど近年にない盛り上がりを見せました。しかしメディアの注目が新型コロナウイルス・パニックに集中してしまい、本来ならもっと高くなるべき筈の祭りへの関心が、著しく削がれてしまいました。

一方ベニスカーニバルは、音楽祭と入れ替わるように2月8日に始まりました。ベニスには近年、時として地元の人々が嫌うほどの数の中国人観光客が押し寄せます。2月25日まで続くカーニバルには、しかし、中国人の姿は多くは見られません。新型コロナウイルスの侵入を恐れるイタリア政府が、1月末から全ての中国便を差し止めているからです。

イタリアが世界に先駆けて中国往来便を無期限全面禁止にしたのは、中国人観光客の激減という弊害はあるものの、どうやら正解だったようです。クルーズ船での感染問題が深刻な日本の状況と比較しての今のところの感触ですが、わざわざ日本とイタリアを比較するのにはそれとは別の理由があります。

新型コロナウイルス恐慌が起きる直前まで、日本は中国で最も人気の高いアジアの海外旅行先という統計が出ていました。一方イタリアは同時期、フランスやスペインまたイギリスなどの人気スポットを抑えて、中国人に最も人気のある欧州での旅行先になっていたのです。

欧州の4国はそれまでも同カテゴリーで熾烈な順位争いをしてきましたが、2019年3月、イタリアが中国との間に「一帯一路」への連携を約束する覚書を交わしたことで、この国に入る中国人観光客が爆発的に増えて、一躍トップに躍り出ました。

覚書以降、中国からの観光客は増え続け、昨年11月にベニスが史上まれに見る水害に襲われたときには、“水の都ベニスが中国人観光客の重さで急速に沈みつつある”というデマが飛ぶほどになりました。

そうした悪意ある風評は、中国人観光客のマナーの悪さや中国人移民の増加、また中国本土の一党独裁政権に対するイタリア国民の不信感など、これまでに醸成された負のイメージが相乗し錯綜して、深化拡大していったものです。

イタリアがいち早く中国便を締め出したのは、言うまでもなくパンデミックへの警戒感が第一義ですが、それ以外にもいくつかの理由があったと考えられます。その第一はEU(欧州連合)の反対を押し切って、G7国として初めて中国との間に前述の 「一帯一路」覚書を交わしたことへの反省です。

EUは中国の覇権主義への警戒感から覚書に難色を示しました。それに対してイタリアは「覚書は拘束力を持つものではなく、我々が望めばすぐに破棄できる」と弁解しました。だがEUの疑念は払拭されませんでした。そこで今回イタリアは、中国便を素早く且つ容赦ない形で排除して、EUの疑念を晴らそうとしたのです。

その施策は、国中にあふれるおびただしい数の中国人移民や、覚書を機に爆発的に増えた中国人観光客への違和感も持ち始めていたイタリア政府と国民にとって、都合の良い一手でもありました。また同時にそれは、観光産業への打撃を覚悟した策でもありました。

そうしたいきさつをひも解くと、イタリアと日本の置かれた状況は意外にも良く似ています。日本にはイタリアに見られるような中国人移民への苛立ちはないかもしれません。しかしながら観光客のマナーの悪さや、中国政府の覇権主義などへの反感は、イタリア同様に強いものがあるのではないでしょうか。

また、中国人観光客を拒否したときに、観光産業が強い悪影響を受ける点も両国は似ています。それでいながらイタリアは、たちどころに中国便を全面禁止にし、日本はそうはしませんでした。その違いが2月20日現在の両国のウイルス感染者数の差異になって現れた、と考えるのは荒唐無稽でしょうか。

日本に於けるウイルスの感染経路はクルーズ船であり航空ルートではない、という反論もありそうです。それに対しては「もしもクルーズ船のルートがあったならば、イタリアはきっとそこも大急ぎで閉鎖していただろう」と応じようと思います。要するに何が言いたいのかといえば、日伊両国間には危機管理能力の大きな差がある、ということです。

さらに話を続けます。伝統的にアバウトなようで実はしたたかなイタリア政府は、中国便を締め出す一方で、同国との仲を白紙撤回させる気はなく、航空便の全面禁止は行き過ぎだとして猛反発する中国政府に、施策は一時的な予防措置だと言葉を尽くして説得し、事態を沈静化させました。

畢竟イタリア政府は、EUや中国、ひいてはアメリカを始めとする世界の反応もしっかりと見据え考慮に入れながら、国としての峻烈な危機管理策をためらうことなく発動した、という解釈も成り立つのです。

いうまでもなく新型コロナウイルス恐慌がどこに向かうのか誰にも分かりません。またウイルスの脅威は実体よりも大きく喧伝されていて、今のところはむしろ風評被害また報道被害のほうがはるかに深刻なのではないか、というふうにさえ見えます。

いずれにしてもウイルスの暴走は気温が上がる春頃には終息に向かうと考えるのが妥当でしょうし、希望的観測も兼ねてそう願いたいと思います。そうなっても、また不幸にしてさらに長期化するにしても、イタリアの危機管理のあり方は日本が学ぶべき余地があるように思うのですが、いかがでしょうか。

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